「虎に翼」星のどか役の尾碕真花、感銘を受けた伊藤沙莉の人間力とは?
伊藤沙莉が主演を務める連続テレビ小説「虎に翼」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜日は1週間の振り返り)で、主人公・寅子と結婚する星航一(岡田将生)の長女・星のどかを演じ、第20週(8月12日~16日放送)から登場した尾碕真花。アイドルグループX21での活動や、スーパー戦隊シリーズ「騎士竜戦隊リュウソウジャー」のヒロイン役、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を経て、朝ドラ初出演を果たした彼女が、現在の心境や、伊藤や岡田との撮影エピソードなどを語った。
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初の朝ドラ出演で芽生えた不安…
朝ドラ・110作目の「虎に翼」は、女性法律家の先駆者である三淵嘉子さんをモデルとしたオリジナルストーリー。日本初の女性弁護士の一人で後に裁判官となった主人公が、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子どもや追いつめられた女性たちを救っていく姿を描く。「去年の夏頃にオーディションを受けたんです。今年に入ってから出演が決まったんですが、朝ドラへの出演はこれから役者をしていく上でも、すごく大きな挑戦。決まった時は正直、すごく不安もありました。楽しみな気持ちよりもどこかそわそわするという感覚でした」と出演が決まった時の心境を振り返る。
だが、その不安や緊張は作品を見て覆ったそうで、「台本をいただいて、『虎に翼』を1話から見て、その時に一視聴者としてすごく楽しくて面白い作品だなと思ったんです。この世界観に入れるということをすごく幸せに感じました。楽しみや、はやく現場に行って皆さんとお芝居をしてみたいという気持ちが強くなりました」と語る。また、周囲の反響も大きかったという。「いつもなら電話かメールで合格を伝えてもらうんですが、この時は事務所に呼ばれて発表されました。ビックリしましたね。両親も『虎に翼』をリアルタイムで見ていたので、すごく喜んでくれて『朝ドラじゃん、おめでとう』って(笑)」と明かす。
演じるのどかについては「芯の部分は私とはそう変わらないというか、人との距離をすぐに詰めようとしないところが似ていると思いました」という一方で、「疑問に思ったことなどをあまり表に出さないところは私と大きく違っていました」と自分との違いも分析する。「私自身は思ったことをすぐに言ってしまうタイプ。のどかは周りの空気を大事にしてその場を円滑にすることを第一に考えるんです。そこが違うなと思いました。演じる時に、のどかの自分を出し過ぎず、取り繕った感じを出そうと意識しました」と役作りを語る。
航一の前妻の娘という役柄ののどか。「星家が猪爪家に近い家族の雰囲気だったら、父の再婚相手とかも受け入れられやすい雰囲気だと思いますが、星家の中で、実のお父さんとも溝が埋まっていない中、自分の家族とは全然違うトラちゃんみたいな人が来るというのは、子供としては複雑に感じる部分があると思いました」と分析し、「相手を受け入れようとするけど、受け入れられないのどかの思いを考えて演じました」と撮影を振り返った。
そんなのどかの特徴の一つとして“目が笑っていない演技”を求められることも。「口角だけ上げて笑おうと。でも現場があまりにも楽しいので、笑いをこらえる方が大変でした。私はあんまり目が死なないと言われることが多いので、目から光を失くす演技は難しかったですね。アニメでいえば黒目の中のキラキラとしたハイライトを失くすような感じだと思います」と苦労を明かした。
主演・伊藤沙莉から得た役者としての学び
兄・朋一役の井上祐貴とは、NHKの夜ドラ「卒業タイムリミット」(2022)で共演経験はあったが、ほかの共演者とはほぼ本作が初めての共演だったという尾碕。「撮影の合間も、みなさん、すごくナチュラルにその場にいるんです。もちろん役を作ってはいると思うんですけど、本当にその人がそこに存在しているかのように振る舞うんです。伊藤さんとお話ししているというよりはトラちゃんと会話している感じ。カメラが回って切り替えるという感じでなく、現場に入った時から切り替えているんだろうなと感じました」と語る。
「最初の時は、みなさんの方から『好きな食べ物はなんですか?』とコミュニケーションをとってくださる感じでした。『入れてあげよう、おいでおいで』という感じではなく、自然と会話を投げてくださって、気がつくと、私も輪の中に入れてくださっていました。すごくありがたかったですね」と振り返った。
伊藤からは座長としてのあり方も学んだ。「和やかな雰囲気の中、急に現場がピリッとするときもあるんです。でも、伊藤さんはその雰囲気の変化をすごく敏感に察知して、さらっと話題を変えてくれたり、現場をいい雰囲気に持っていこうとされるんです。自分がではなくて、どうすれば周りがいやすくなるかという環境づくりを率先してされている印象を受けました。これが座長なんだなってすごく感銘を受けましたね」と間近で見た伊藤の印象を明かした。
父役の岡田についても、「のどかが初めて本音を吐露し、それを機に星家がいい方向に向かっていくという大切なシーンがあるんですが、そのセリフの途中に、言いづらいセリフ、このニュアンスじゃないなと思うセリフがあったんです。セットでテストをして前室に戻ると、岡田さんが私の迷いに気づいてくれて『何かやりづらいところあった?』と聞いてくれました。伊藤さんも岡田さんも引っ張ろうとするより、いつもそっと支えてくださるんです。現場の居心地もよく、のどかとしても感情を出しやすいありがたい環境だなと思いました」と二人への感謝を述べた。
ロングヘアをショートに変えた理由は?今後の俳優活動への思い
伊藤や岡田も含め、これまでのさまざまな共演者との仕事を経て、心境の変化があったことを明かす尾碕。「いろんな役ができると思われたいし、この作品に使うなら尾碕真花かなと思われるところまで自分を高めていきたい。自分の見た目やスタイルより、お芝居で評価されたいという気持ちが今は強いんです」と述べる。
「20歳を超えてから母親の役を4回演じたり、ちょっと口の悪い役やお嬢様の役を演じたり……。でも、まだいろんな役をやっているというより、少し求められる役柄が偏っている感じがします。頑張って役者としての幅を広げていきたいです」と今後の役者活動にも意欲を見せる。
髪型も最近、ロングヘアから短い髪に変えた。そこにも強いこだわりがある。「私はロングにすると、顔立ちが幼く見えたりするんです。清楚とか、女の子っぽいと思われる。でも私の性格はどちらかというと、男っぽいところも多いんです。今はショートにして、自分の素の性格に寄っています」と明かし、「苦手のない、なんでもできるマルチな役者でいることが私の目標です。伊藤さんのお芝居を間近で見ると、人間力が大切ということをいつも感じます。周囲の演者さんを引っ張る力を持った役者を目指してこれからも頑張っていきたいです」と意気込みを語った。(取材・文:名鹿祥史)
ヘアメイク:市岡愛 スタイリスト:村松栞奈