『インサイド・ヘッド2』の思春期がリアルな理由…ティーンの女子軍団がアドバイザーを務めていた
ディズニー&ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』のケルシー・マン監督が来日時にプロデューサーのマーク・ニールセンと共にインタビューに応じ、思春期の感情をリアルに描くために力を借りたという“ティーンの女の子軍団”の存在と、彼女たちの貢献について語った。
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思春期に突入した13歳の少女ライリーの混乱する頭の中を色鮮やかに描いた本作。友人・先輩など人間関係は複雑になり、子供の頃は純粋に楽しめたアイスホッケーも結果が求められるようになって苛烈なプレッシャーがのしかかり、新たに現れた大人の感情であるシンパイ(不安)、イイナー(嫉妬)、ダリィ(倦怠)、ハズカシ(羞恥心)が彼女の中で嵐を巻き起こすことになる。
マン監督は、13歳の時の自分自身、さらに今やティーンの子供を持つ親としての視点を生かすだけでなく、「今日のティーンエイジャーが確実にライリーの人生で起きていることに共感できる」ようにするために思い切った方法を取った。それが、“ライリーのクルー(Riley's crew)”と名付けられたティーンの女の子軍団のアドバイザーとしての起用だ。
「スタジオで『みんな聞いて! 僕はティーンエイジャーの女の子たちのグループにアドバイザーになってほしい』と言ったら、驚いたことにすぐに『いいね! 何人?』と聞かれて、『わからないけど9人かな?』という感じでトントン拍子に進んで(笑)。それで“ライリーのクルー”という13歳から18歳まで、合計9人の女の子のグループが出来たんだ」
ピクサーでの映画作りは、都度ストーリーリール(脚本を基にストーリーボードを作り、編集して仮の音を付けたもの)を作って、語るべき物語を見つけていく形をとる。そのためさまざまなバージョンが存在するのだが、マン監督はその全てを“ライリーのクルー”に見せたのだという。「正確に描けているか、その感情が真実であるか、そして自分の物語として見ることができるか、彼女たちの考えを知りたかったから」
どんなシビアな意見が出るのか、ティーンの女の子軍団の評価を聞くのはドキドキしそうなものだが、マン監督は全然緊張しなかったとのこと。「最初は少ししたかもしれないけど、彼女たちはすごくラブリーなグループなんだ。自分たちの仕事をとても真剣に捉えてくれて、ものすごく助けになってくれた」。プロデューサーのニールセンも「彼女たちは本当に助けになろうとしてくれた。僕たちがちゃんと意見を聞くと信じていたし、自分の意見を共有することに尻込みしたりしなかった」とその貢献に感謝していた。
“ライリーのクルー”はセリフが若者のものとして不自然じゃないかもチェックしてくれたといい、マン監督は「僕たちが使っていた言葉のいくつかは、アップデートしないといけないことがわかったよ。脚本家を含め、僕たちがティーンだったのは随分前だから」と笑う。その一方で、時代を超える作品にするために、現代的にし過ぎないことも重要だった。「ティーンの主人公だとそうするのは難しいんだけどね。今の時代にあまりに限定的な内容にしてしまうと、トレンドの移り変わりは激しくてすぐに古臭くなってしまうから」
また、“ライリーのクルー”の意見で意外だったのは、彼女たちがライリーとアイスホッケーの関わりに強く共感していたことだったそう。マン監督は「バレーボール、サッカー、体操など、彼女たちの多くが実際にスポーツをしていたんだ。彼女たちは自分たちの経験を通して、ライリーの経験を語っていた。“ただ好きでスポーツをやる”のと“何かを成し遂げるためにスポーツをやる”ことの違いだ。それは僕たちが、ライリーに経験してほしかった部分でもある。彼女たちの多くが、このスポーツの部分に反応していた。最初はそのスポーツが好きで始めるけれど、ある段階でとても競争的になって楽しさを失ってしまう。映画のラスト付近での出来事に彼女たちがすごく反応していたことは、結構驚きだった」と振り返っていた。(編集部・市川遥)
映画『インサイド・ヘッド2』は公開中