広瀬すず主演!カズオ・イシグロのデビュー作を実写映画化 2025年夏公開
ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの長編小説デビュー作「遠い山なみの光」が、広瀬すず主演、『ある男』の石川慶監督のタッグで実写映画化され、2025年夏に公開されることが決定した。
原作は、2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など、映画化作品でも高い評価を受けるイシグロが1982年に発表し、王立文学協会賞を受賞したデビュー作。自身の出生地でもある長崎を舞台に、戦後間もない1950年代の長崎と、1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていく。主人公の悦子を広瀬が演じ、『ある男』で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞含む最多8部門の受賞を果たした石川監督がメガホンを取るほか、イシグロもエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねる日英合作となる。
広瀬が演じる悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきた女性。イギリス人の夫との間にニキという作家を目指す娘を持つが、夫とニキの異父姉を亡くして以来、離れて暮らしていた。自著執筆のため実家を訪れたニキは、悦子と数日間共にする中で、母が最近よく見るという、ある「夢」の話を聞くことになる。
広瀬は、この作品に臨むにあたり「難しくて、悩みながらでしたが、不穏な緊張感を感じるたび悦子に近づいているのを確信し、心強い座組のなかお芝居できた事がとても宝物のような時間でした」とコメント。その演技について、「紛れもなく戦後長崎に生きた悦子そのものだった(本当に素晴らしかった!)」と石川監督も絶賛している。
「物語そのものは、第二次世界大戦の惨禍と原爆投下後の、急激に変化していく日本に生きた人々の、憧れ、希望、そして恐怖を描いています」と語るイシグロ。「今もなお私たちに影を落とし続けている、あの忌まわしい出来事の終結から80年を迎えるこの時期に、この映画が公開されることは、なんと相応しいことでしょう」と本作への期待を寄せている。(高橋理久)
広瀬、石川監督、カズオ・イシグロのコメント全文は以下の通り。
広瀬すず
不安感を抱きながら演じる、そんな日々でした。難しくて、悩みながらでしたが、不穏な緊張感を感じるたび悦子に近づいているのを確信し、心強い座組のなかお芝居できた事がとても宝物のような時間でした。希望を捨てず、光に向かって。まだまだ気が早いですが皆様に届く日まで、待ち遠しいです。
石川慶監督
目下絶賛撮影中、ロンドンへ向かう飛行機の中でこの文章を書いています。いまだにこの特別な原作を自分たちの手で映画化しているとは信じられない思いでいます。この大きな原作に立ち向かう勇気を僕に与えてくれたのは、他ならぬ原作者のカズオさんの「この物語は、日本の若い世代の人たちの手で映像化されるべきだと思っていた」というお言葉でした。
すでに撮了した広瀬すずさんは、紛れもなく戦後長崎に生きた悦子そのものだったし(本当に素晴らしかった!)、他にも考えうる最高のキャストスタッフが集まってくれました。イギリスからは、自分の青春時代に大きな影響を受けた数々の傑作映画を制作してきた、Number 9 Films が参画してくれています。
特別な映画が出来つつある、そういう手応えを確かに感じています。来年の映画公開、ぜひ期待してお待ちください。
カズオ・イシグロ
私は石川監督の前作『ある男』の大ファンで、彼が私の小説「遠い山なみの光」の映画化を希望してくださった最初の日から、とても興奮していました。石川さんは映画という言語を巧みに操り、俳優たちから見事なニュアンスの演技を引き出す監督です。私が夢中になって読んだ今回の素晴らしい脚本は、ミステリアスで感動的でした。主演の広瀬すずさんは、国際的な舞台において今最もエキサイティングな若手俳優の一人です。これらの理由から、私はこの映画の完成をとても楽しみにしています。
物語そのものは、第二次世界大戦の惨禍と原爆投下後の、急激に変化していく日本に生きた人々の、憧れ、希望、そして恐怖を描いています。今もなお私たちに影を落とし続けている、あの忌まわしい出来事の終結から80 年を迎えるこの時期に、この映画が公開されることは、なんと相応しいことでしょう。