「光る君へ」三浦翔平“呪詛デー”の裏側明かす 「第38回は呪詛祭り」と予告
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で藤原伊周を演じる三浦翔平が5日、奥州市江刺の江刺体育文化会館(ささらホール)で行われたトークショーに登壇し、伊周の波乱に満ちた軌跡、そして話題の“呪詛”シーンを述懐。「個人的にもこんな悪っぽい感じは初めてだったので、新しい扉を開けた。いい役をいただいてありがとうございます」と自身初となる大河ドラマへの思いを語った。イベントには制作統括の内田ゆきも登壇した。
「炎立つ」(1993)をはじめ数々の大河ドラマの撮影が行われた「歴史公園えさし藤原の郷」の地としても有名な奥州市江刺。「藤原の郷」では「光る君へ」でも初回の安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の初登場シーンや、第4回の「五節の舞」のシーンなど度々撮影が行われている。三浦にとって岩手を訪れるのは約6年ぶりとなり、「うちの父親が岩手出身で……」と切り出すと場内で「ええ……」と驚きの声が上がった。
「実はそうなんです。釜石っていうところなんですけど、小さいときは毎年夏休みに来るのが我が家のルーティーンで。大人になってこの仕事を始めてなかなか来られなかったんですけど、ちょうど6年前ぐらいに来て。今日、藤原の郷に行かせていただいたんですけど、20代半ばぐらいに(2012年に)「逃走中」っていう番組がありまして。“あれ、見たことがある!”って。ずっと来たかったんですよね」
演じる伊周について司会より「これまで演じてきた役とは異なるキャラクター」と指摘があり、役作りで心掛けたことを問われると三浦は「伊周という人間の史実がそこまで多いわけではないので、作るのが難しい反面、自由だったりする。ほとんどの人がわからないので作ってしまおうと。大石(静)先生の台本とかけあわせて。「長徳の変」から老けていくというのは聞いていたので、逆算して最初はきらびやかに。後半に行くにつれて声質だったり動きだったり姿勢を変えていけばいい感じになるんじゃないかなと作り始めました」と語った。
三浦の芝居について制作統括の内田は「伊周はドラマの中では対道長という大きな役割があるのでそれをすごく考えてくださったなと思います」と言い、三浦は「道長との対立構造は結構考えました。悪役じゃないけど、対立しないと作品自体が盛り上がっていかないので、だったら徹底的にした方が面白くなると思いました」と“ヒール”としての側面を意識したことを明かした。
そして、伊周といえばもはや名物となっているのが、左大臣・道長(柄本佑)やその家族を執拗なまでに呪詛するシーン。SNSでは「伊周は一体いつまで呪詛を続けるのか」と話題になっているが、三浦いわく「呪詛は疲れる。エネルギー量をあげていかないと……」とかなり消耗度が高い様子。内田によると6日放送の第38回は「呪詛祭り」だといい、三浦は「我々の中では呪詛デーとか言うじゃないですか。呪詛のシーンを撮る日」と呪詛シーンの撮影に触れ、「共演者の方が来て“今日、伊周何時まで? あそっか、きょう呪詛デーね”みたいな感じなんですけど、その中でも台本に“精神が崩壊している”とト書きに書かれていた呪詛シーンが明日オンエアになります」と“予告”した。
「相当すごいエネルギーを呪詛に使ったと思います」と内田が三浦の労を労うと、三浦は「エネルギーが飛び出るものがありましたよね。でも呪詛のシーンはエネルギー的な問題なのでお芝居が盛り上がればいいんですけど」としながら、伊周が道長に憎しみを抱くに至った道筋を振り返った。
「母親(貴子)が亡くなってしまったときは重かったですね。一目会いに来ただけなのに会わせてもくれずなおかつ亡くなってしまう。伊周的には家族を大事にしていたので、そこはお芝居として精神的につらかったですね。この時代って貴族って亡くなると穢れといってあまり近くに寄りたがらないもの。それを監督と話しているときに、このときは穢れとかを意識できないぐらいに近寄ってしまうんじゃないかと何回かテストをやったんですけど、一番ぐっとくるのが目の前でご遺体をみたときに一回伊周の精神は崩壊しているんですけど、そこから道長への……まあ八つ当たりなんですけどね。怒りが出てくる」
内田は「この時代はまだ科学がないから呪詛、占い、祈祷というのがリアルに日常生活に動いていたので、生活の中に生きていた。身近なものだった」と言い、呪詛の脅威にも言及。「(劇中に登場する)呪詛の文句も陰陽法師の先生が少し変えたとおっしゃっていて、理由を尋ねたら本当に効いてしまうからだと」
なお、後半になるにつれて道長に対する負の感情が増幅していく伊周だが、それを止めようとしたのが弟の隆家(竜星涼)。第35回では御嶽詣へ向かった道長一行を暗殺しようとするが、先回りした隆家が阻んだ。三浦は、この時の伊周の心情をこう振り返る。
「なんで邪魔するんだと。ただ、兄弟がしっかり話したのはこれが最初で最後なのかなと。隆家くんは必死に変な方向に行こうとしている兄を止めようとしているんですけど、伊周にはそれを許容できる心の余裕はなくて。僕、このシーンの時にここで終わりだと思ったんですよ。伊周も受け入れて、きれいにしめくくるのかなと思っていたので「このあとどうなるんですか?」と聞いたら、「より呪います」と(笑)。まだ呪うんだ! って。狂気じみていく序章だったんですね」
「道長に対しての恨み、妬み、嫉み、負の感情を道長に当てないと伊周自身が保っていられない状況だったのかなと解釈したんですけど。逆恨みもいいところなんですよね。きっかけはあるんですけどね」とも語る三浦。終盤で司会から伊周以外に演じてみたいキャラクターを問われると、「一条天皇を演じて御簾の向こう側に行きたい」と答えつつ、安倍晴明も。理由は「ちゃんと呪術をやりたい」というものだった。
また、伊周と似ているところは家族思いなところで「家族と一緒にいることが多く父とどこかに行ったりもしますし、家族が好きですね」、伊周に声をかけるとしたら「もうやめとけ! もう少し(人の意見を)受け入れる心を養ってほしかったですね」とのこと。
最後に今後の見どころを問われると、内田が「37回で「源氏物語」の豪華本が出来た時に光源氏の最高潮まで書き終えていて、これから陰の部分に傾いていく流れがあるんですよ。「光る君へ」も道長に少し陰が差していって、それを作家として見つめるまひろが出てくるので、そこも見ていただけたら」と呼び掛けていた。