第3回日本ホラー映画大賞発表!清水崇監督「とにかくレベルが高くなっている」
第3回日本ホラー映画大賞授賞式が16日、グランドシネマサンシャイン池袋にて開催され、片桐絵梨子監督の『夏の午後、おるすばんをしているの』が大賞を受賞。選考委員長を務めた清水崇監督は「とにかくレベルが高くなっている」と応募作品の質の高さに舌を巻いていた。この日は各受賞者のほか、選考委員の堀未央奈、FROGMAN、小出祐介(Base Ball Bear)、宇野維正、ゆりやんレトリィバァも出席した。
日本ホラー映画大賞は、プロ・アマチュアを問わず、年齢、性別、国籍などの制限なく誰でも応募できる。実写映像作品は、3分~90分程度の未発表・完全オリジナル新作、アニメーション映像作品は、10秒~30分程度の未発表・完全オリジナル新作が応募条件。大賞受賞者には賞金20万円と、副賞として製作委員会製作による新作長編映画(応募作品のリメイク版または完全オリジナル作品)監督の権利が与えられる。第1回大賞受賞・下津優太監督は今年1月19日公開の『みなに幸あれ』で、第2回大賞受賞・近藤亮太は来年1月24日公開の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で商業映画監督デビューを果たしている。
清水監督は、大賞に輝いた『夏の午後、おるすばんをしているの』について「片桐監督は20代から推していた監督」と以前からその才能に注目していたことを明かすと「でも、だからと言ってえこひいきしたわけではないですよ。ほぼ全員一致でこの作品がいいとなったんです。彼女には才能があると再認識できました」と語る。
片桐監督は「尊敬していた清水監督からこの賞をいただけて、まことに光栄です」と涙ぐみ、「撮影に来てくださったスタッフの方、ずっと応援してくださった方に感謝の気持ちを伝えたいです」と懸命に言葉を紡ぐ。作品について片桐監督は「この映画は子供のころの不安や孤独、記憶を、夏の情景のなかで描いてみたいと思ったところからスタートしました。急な声掛けにもスタッフや役者さんが集まってくれて、小さな奇跡の瞬間を積み重ねて宝物のような作品になりました。こんなに大きな劇場で上映されるような賞をいただき、これを励みに新しい映画を作っていきたいです」と未来に思いを馳せていた。
清水監督は第3回を迎えた日本ホラー映画大賞を「とにかくレベルが上がっている」と総評。「受賞作品以外にも気になった映画はたくさんあります。僕も大学時代から自主映画を作っていたのですが、仲間のなかで完成させられなかったのは僕ぐらい。そんな僕でも25年間、ホラー作品を撮り続けているので、今回ダメだった人もめげずに挑戦してほしい」とエールを送っていた。
第2回に続き選考委員に名を連ねるゆりやんは「本当に恐れ多いんですよ」と恐縮しつつも「素晴らしい作品ばかり。ホラー映画といっても、いろいろな怖さがあり、クリエイティブな気持ちが掻き立てられました」と目を輝かせる。と言いつつ、「怖い映画ばかり観ていると、何か呪いが起きるのではないかとみんなで思っていたら……」と切り出すと、おぞましい顔を見せ「ブー」とおならをするギャグを繰り出した。
また第4回について清水監督は「今回は結末を委ねる系が多かった。落ちをしっかり描いてくれたら……という作品が結構あった。今後商業でやっていくなら、エンタメとしてはっきりしたものも必要なのでは」とアドバイスを送ると「僕も毎回『ジャンプスケアを入れてください』と言われるんです。観客動員を狙わないといけないということもあり、そういう視点を入れてもいいのかも」と述べていた。
一方で清水監督は「皆さん大賞を目指してくるのでしょうが、あまり変に媚びるより、自分の独自を目指して欲しい」と“誰もみたことのないホラー映画”に期待を寄せていた。受賞作品は以下の通り。(磯部正和)
■大賞
『夏の午後、おるすばんをしているの』:片桐絵梨子
■選考委員特別賞
『蠱毒』:澁谷桂一
■アニメ部門賞
該当者なし
■ギークピクチュアズ賞
『逆廊』辻知広 碇山薫人 長田渉
■ニューホープ賞
『fataL/ファータル』:峰尾宝
■株式会社闇賞
『リフレイン』:司馬宙
■PRESS HORROR賞
『闇の経絡』:及川玲音
■シネマンション賞
『異星人回鍋肉』:小泉雄也監督
■豆魚雷賞
『2階に恐竜がいる』:増本竜馬監督
■シネマサンシャイン賞
『東京から西へ100マイル』:ヤマモトケンジ監督