【ネタバレ】劇場版『風都探偵』原作にないバトルを追加した狙い 椛島洋介&三条陸&塚田英明が語るサプライズの裏側
アニメ「風都探偵」初の劇場版『劇場版「風都探偵 仮面ライダースカルの肖像」』の脚本監修を務めた三条陸、エグゼクティブプロデューサーの塚田英明、監督の椛島洋介]がインタビューに応じ、クライマックスで描かれる原作にない展開、劇場版で初登場した怪人・ドーパントや、オリジナルキャラクターについて語った。(以下、劇場版のネタバレを含みます)
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「風都探偵」は、特撮ドラマ「仮面ライダーW(ダブル)」(2009~2010)の正統続編として、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館刊)で連載中の人気漫画。2022年に、アニメシリーズ(全12話)が放送・配信された。劇場版では、仮面ライダーWが誕生した一夜「ビギンズナイト」の物語がつづられる。
オリジナル展開を追加した理由
クライマックスでは、仮面ライダーW ファングジョーカーに変身した左翔太郎&フィリップが、秘密組織「ミュージアム」の研究島から脱出する途中で、オーシャン・ドーパントと対峙する。オーシャン・ドーパントは、園咲冴子の側近・大嶋凪がオーシャンメモリを使って変身した姿で、劇場版で初登場したキャラクターだ。
オーシャン・ドーパントの映像化について、椛島監督は「漫画ではメインのバトルシーンが中盤で終わっているので、劇場版ではもう1個ほしいとオーダーしていたんです。そこで、(翔太郎たちが)海に出ることから『オーシャンはどうですか?』とご提案いただいたことがきっかけです」と経緯を説明する。
椛島監督が話す通り、原作漫画の「ビギンズナイト」は序盤のアントライオン・ドーパント戦、中盤のタブー・ドーパント戦でバトルシーンが終了する。三条は「最後は撤退になってしまうので、クライマックスにボリューミーなものが来ないと、劇場版を観に来た方の満足感が低くなってしまいます」とオリジナル展開を増やした理由を明かし、「アクションシーンを増やすのであれば、翔太郎とフィリップが初めて仮面ライダーWになる話なので、Wの戦闘を増やすべきではということになりました。ファングジョーカーが撤退する時に、ボス敵と戦うことにしましょうと相談して、メモリをどうしようかと迷っていた時に『海だから、オーシャンじゃないの?』という流れになったんです」と補足した。
「W-G-X」ではなく「W-B-X」挿入歌を急遽変更
オーシャン・ドーパントのデザインは、「風都探偵」のクリーチャーデザインを担当する寺田克也が担当した。「寺田さんに発注する時は、あえて役どころなどは言わず『このドーパントを描いてください』と名前とイメージだけ投げることが多いんです。しかし、今回のオーシャンに関しては『劇場版のラスボスです。こんなふうに活躍して、対戦相手はファングジョーカーです』と劇中での役割を共有して発注しているので、ラスボスにふさわしいデザインに仕上げていただきました」(三条)
変身者である大嶋凪は、園咲霧彦/ナスカ・ドーパントの前の“冴子の男”という方向性でキャラクター設定が進められたという。「“冴子の男”シリーズは本当に大好きなシリーズなので。この間もコン・テユ(加頭順/ユートピア・ドーパント役)にもインタビューを実施したり、世間は今、冴子がアツい状態ですから」(塚田)
また、オーシャン・ドーパント戦では「仮面ライダーW(ダブル)」の主題歌「W-B-X ~W-Boiled Extreme~」が流れるサプライズもあった。当初は「風都探偵」の挿入歌「W-G-X ~W Goes Next~」が使用される予定だったが、椛島監督のこだわりで差し替えられたという。「翔太郎とフィリップにとっての初バトルなので、ここは『W-B-X』でないと成立しないと急遽差し替えをお願いしました。『W-G-X』の歌詞は、『風都探偵』における2人になぞられて書かれているので、原点にふさわしい『W-B-X』がピッタリですよね」(椛島監督)
サイクロンスカルのデザイン秘話
また、最後のサプライズとして登場したのが、鳴海荘吉&フィリップで変身する仮面ライダーW幻の基本フォーム「サイクロンスカル」だ。当初は、原作通りにシルエットで登場する予定だったが、実写ドラマでスカルをデザインした小林大祐によって、ファン待望の映像化が実現した。
三条は「基本設定上、ダブルドライバーを使用すれば全部Wのボディの鋳型になるはずですが、強力なスカルメモリに少し干渉されているようなデザインにしてみたらどうだろうということで、胸や口のデザインなどは若干スカル寄りで、マフラーもスカル風のものになっています」とビジュアルについて解説。椛島監督も「すでにやり取りされているデザインを見せていただいた時に、胸がスカルの肋骨になっていたりして、『これを描きたい!』とずっと思っていました」と興奮気味に振り返っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
『劇場版「風都探偵 仮面ライダースカルの肖像」』は期間限定上映中