『正体』森本慎太郎の起用理由は?藤井道人監督明かす
横浜流星と藤井道人監督がタッグを組んだ新作映画『正体』で、SixTONESの森本慎太郎を起用した理由、そして俳優・森本慎太郎の魅力について藤井監督が語った。
染井為人の小説「正体」を映画化した本作は、5つの顔を持つ指名手配犯・鏑木(横浜)の逃亡劇を描いたサスペンスエンターテインメント。森本は、主人公の鏑木慶一(横浜)の逃亡先となる工事現場で出会い、友情を育むことになる日雇い労働者・野々村和也を演じる。ワイルドさと優しさが魅力の人物だが、その一方で多額の借金に苦しめられるなど、人間の弱さもしっかりと体現するキャラクターとなっている。藤井監督自身も「すごいスタッフの中にも和也推しの人がいるぐらい、人間らしい、本当にいい芝居をしてくれた」と満足げだ。
そんな森本のキャスティングについて「ちょうど彼がやっていた山ちゃんのドラマ(日本テレビ系のドラマ「だが、情熱はある」)を観て。すごくトリッキーなんだけどテクニックもあって。すごく面白い俳優だなと思っていた。そこでプロデューサーチームとも相談して、お願いしました」と振り返った藤井監督。「きっと森本くんからすると、最初は僕の演出なども、多分今まで彼がやってきたこととかなり違っていたと思う。だから最初は苦労してたと思うんですが、今やスタッフの中にも和也推しの人がにもいるぐらい。人間らしい、本当にいい芝居をしてくれる俳優だなと思いました」。
本作の撮影は2023年の夏と、2024年の初冬の2期にわたって行われた。森本が出演する主要なシーンは夏に行われたが、この日の撮影はそれから半年近くたった冬に実施されたものとなる。この日は、潜伏生活を送っていた鏑木(横浜)と、和也(森本)が久しぶりに顔を合わせるシーン。当初は台本にはなかったシーンだったが、夏の撮影を終えて手ごたえを感じた藤井監督の「群像劇としてのゴールをつくりたい」という思いにより、冬の撮影のクランクインに合わせて、急きょ追加されたシーンとなる。
「森本くんも半年ぶりのお芝居なので、最初はすぐに役に入れなくて、結構緊張したと言っていたんですが、すぐに役を思い出してくれて役に入り込んでくれた。やはりその半年という時間は大事だなと思いましたね」と振り返った藤井監督。劇中の季節に合わせて撮影をすることによって、森本をはじめとした役者たちの芝居にも大きな影響を与えたという。「それは山田(杏奈)さんや吉岡(里帆)さんもそう言ってくださっているんですけど、そういうものの豊かさに俳優が呼応してくれるというのがすごいうれしくて。俳優にいい芝居をしてもらうためには、やはり僕らがちゃんと場を作らないと、いい芝居は出ないし、いい映像もつくれない。その場をつくるということは、プロデューサーチームに迷惑をかけてでも、やれる限りはやっていきたいなと思ってます」と手応えを語る。
「森本くんの場合は、半年ぶりの芝居なんで。まず一発目は彼の芝居を見せてもらいました。それはすごく良かった」という藤井監督。そのことを踏まえた上で、鏑木のことを和也はどう受け止めるのか、そうした感情を伝えた上で、表情や身体の動きなど、テクニカルなところを伝えながら芝居を組み立てていく。そこから生み出された芝居は、非常に感動的なシーンへと仕上がっており、藤井監督も「森本くんが最後にすごい芝居をしてくれて。うれしかったです」と満足げな様子を見せた。(取材・文:壬生智裕)
映画『正体』は11月29日より公開