アカデミー賞主演女優賞、女優生命を懸けた怪演光るデミ・ムーアが本命か!?
第97回アカデミー賞
残念なことに今年はアジア系の勢いは見られず、代わりにラテン系がパワーアップ。トランスジェンダーであることを公表している女優として初めてカンヌで女優賞に輝いたカルラ・ソフィア・ガスコンや、ブラジルの名女優を母親に持つフェルナンダ・トーレスの躍進に期待がかかる。多才なシンシア・エリヴォにもチャンスがあるかもしれないが、パワフルなヒロインを演じたマイキー・マディソンがオスカー有力視されていた中、長いキャリアを誇るものの、賞とはなかなか縁がなかったデミ・ムーアが一躍本命に躍り出たようにも。女優生命を懸けたとも言えるデミの怪演ぶりと言ったら! とことんまでやり尽くした彼女の気迫と執念に感服する。(文・平野敦子)
シンシア・エリヴォ 『ウィキッド ふたりの魔女』
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ナイジェリア人の両親のもと、イギリス・ロンドンで育つ。2011年に女優としてデビューし、2013年にロンドンで上演された舞台「カラーパープル」で主人公のセリーを熱演して評価される。ブロードウェイでも同役を務め、第70回トニー賞でミュージカル主演女優賞に輝き、翌年の第59回グラミー賞で同作が最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を受賞。『ハリエット』では19世紀のアメリカで、奴隷解放のために戦った主人公のハリエット・タブマンを演じると同時に主題歌も担当し、第92回アカデミー賞で主演女優賞と歌曲賞にノミネートされた。まさに多才な実力派女優が初オスカーを狙う。
シンシア・エリヴォ
1987年1月8日生まれ
イギリス・ロンドン出身
主な出演作
『刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン』(2023)
『ピノキオ』(2022)
『ハリエット』(2019)
カルラ・ソフィア・ガスコン 『エミリア・ペレス』
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スペイン・マドリード州のアルコベンダスで生まれ、16歳で俳優としてのキャリアをスタートする。スペインでドラマや映画に出演した後、メキシコの映画監督フリアン・パストールの説得により2009年にメキシコに移住。メロドラマでさまざまな役を演じてキャリアを積む。2018年に性別適合をほぼ終了すると、出生名で自伝を出版し、カルラ・ソフィア・ガスコンとして新しいスタートを切る。本作で、共演者らと共に第77回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。トランスジェンダーであることを公表している女優として初めて同賞を受賞した勢いのある女優が、女性として生きようとする麻薬カルテルの元ボス役で頂点を目指す。
カルラ・ソフィア・ガスコン
1972年3月31日生まれ
スペイン・マドリード出身
主な出演作
『エミリア・ペレス』(2024)
「レベルデ ~青春の反逆者たち~」(2022)
マイキー・マディソン 『ANORA アノーラ』
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カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれ、馬術に夢中だった彼女は、姉が脚本家と結婚したことで映画に興味を持つように。やがて女優を目指すようになり、主演に抜てきされた『リザ・リザ・スキーズ・アー・グレイ(原題) / Liza Liza: Skies Are Grey』で長編デビューを果たし、コメディーシリーズ「ベター・シングス」のマックス役で一躍有名に。自らの幸せをつかみ取ろうとする等身大のヒロイン役で一気にアカデミー賞候補に躍り出た若きスターのオスカー受賞に期待が高まる。
マイキー・マディソン
1999年3月25日生まれ
アメリカ・カリフォルニア州出身
主な出演作
『ANORA アノーラ』(2024)
『スクリーム』(2022)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)
デミ・ムーア 『サブスタンス』
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16歳で高校を中退してモデルとしてキャリアをスタートさせる。1981年に『恋人たちの選択』でスクリーンデビューを果たし、パトリック・スウェイジと共演した『ゴースト/ニューヨークの幻』の大ヒットによりトップスターに躍り出る。『素顔のままで』『G.I.ジェーン』などさまざまな役柄に挑戦するも一時休業し、『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』で見事復活。本作では、美と若さに執着する元人気スターというハマリ役で情念をメラメラと燃やす体当たりの怪演を見せた。長い女優生活初のゴールデン・グローブ賞主演女優賞を手にしたベテラン女優が本気で賞を取りにいく。
デミ・ムーア
1962年11月11日生まれ
アメリカ・ニューメキシコ州出身
主な出演作
『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』(2003)
『G.I.ジェーン』(1997)
『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)
フェルナンダ・トーレス 『アイム・スティル・ヒア』
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『セントラル・ステーション』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたブラジルの女優フェルナンダ・モンテネグロと、俳優のフェルナンド・トーレスの娘としてブラジル・リオデジャネイロに生まれる。10代で女優としてデビューした彼女は、舞台・テレビ・映画で女優として活動するだけでなく、作家や脚本家としても精力的に仕事をし、マルチな才能を発揮する。アルナルド・ジャボール監督の『ラブ・ミー・フォーエバー・オア・ネバー(英題) / Love Me Forever or Never』で第39回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。母にオスカーノミネートの栄誉をもたらしたウォルター・サレス監督の最新作では、1人の女性を時代ごとに母フェルナンダと演じ、母が果たせなかったオスカー受賞の悲願に挑む。
フェルナンダ・トーレス
1965年9月15日生まれ
ブラジル・リオデジャネイロ出身
主な出演作
『リオ、ミレニアム』(1999)
『クアトロ・ディアス』(1997)
「静かなる戦い」(1991)