略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。
近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。
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実際の刑務所で実際に行われている更生プログラム「舞台演劇」の模様を、名優コールマン・ドミンゴと実際にプログラムに参加した元囚人たちが演じる。劇映画の形を取っているが、肌触りはドキュメンタリーに近い。罪を犯した男たちが協力し合い、お互いを理解して舞台を作り上げていく。何よりも役を演じることが、「人間に戻る」ためのプログラムになっているのが心に響く。誰かにレッテルを貼られ、虚勢を張り、悪ぶっていた男たちが、役に向かい合うことで自分を見つめ直すというわけだ。派手な見せ場に頼らず、抑制的でありながら、感情がほとばしる脚本、演出、そして何より演技が見事。
フィラデルフィアのとある古い一軒家を舞台に、その家で暮らしたさまざまな家族の姿を定点カメラからの映像で描く。中心になっているのが戦後を生きたトム・ハンクス演じるリチャードの家族。家族にとって楽しい時間は短く、辛い時間は長いという実感がそのまま作中の時間に表れている。自分の家族との時間を照らし合わせながら観れば、「光陰矢の如し」という言葉の重みがよくわかるだろう。この世はすべて“ライフ・オブ・サークル”なのだとわかっていても、去っていく家族を思うと涙が出る。それにしても、家族が抱える悩みはアメリカ建国の父、ベンジャミン・フランクリンの時代から同じということか(彼らの家は窓から見える)。
ノスタルジックで瑞々しくてキラキラしているけど、後味はどこまでも苦い。1999年を舞台に、思春期の少女たちの恋と友情と戦いを描く。同じ年頃の少女を恋する少女と、性加害を受ける少女の親友。目に見える敵は、男の加害性を煮染めたような一人のコーチだが、実際は親であり、警察であり、伝統であり、韓国社会そのものだろう。彼女たちのきれいな心を守ろうとする戦いはずっと続いている。「天国にはいけない」というタイトルと現代の韓国の若者たちが自虐的に使う「ヘル朝鮮」という言葉が対応しているように見える。エンディングで流れる紫雨林「恋人発見!」のイ・ユミとパク・ソヨンによるカバーが良すぎて繰り返し聴いていたい。
家族を捨ててイスラム過激派組織に加わった10代の姉妹。残された母親と妹たちにプロの俳優を加えて、家族の歴史を演じさせるというドキュメンタリー。チュニジアの政治、宗教、性的虐待などが複雑に絡む中、これまで過去を断ち切ろうとしていた家族たちは、真実と虚構を行き来しつつ、自分の過去を見つめ、家族の関係を見直し、とても普遍的な結論へとたどり着く。これは遠いアフリカの国の話ではなく、日本で暮らす自分たちとも深く関係のある話である。残酷な話だが、希望もある。家父長制に疑問を持つ人、男性からの抑圧に悩まされている人、親からの強い干渉に悩まされている人、思春期の頃にとにかく混乱してしまった人に見てもらいたい。
やりたいことはあるのに手応えがない平祐奈の先輩と、やりたいことが見つからない久保史緒里の後輩が、小さなアパートで寄り添ってグズグズしながら暮らしていく。コスパとタイパとスマホが幅を利かせている今も、若者たちはこんな風にモラトリアムな季節を過ごしているのだろうか。原作が発表された約20年前とのギャップが少し心配になる。凡庸な(と書くと作曲者に失礼だが)ポップスに中指を立ててロックンロールをぶちかます展開も、おじさんには心地よく響くが今の若い子たちにはどうなんだろう。主演の二人はもちろん、バンドメンバーもとても良かったので、テレビ東京の深夜で30分ドラマのスピンオフが観たい。
結城真一郎のミステリー小説を、ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE」の大森元貴と『仮面ティーチャー』シリーズなどの菊池風磨主演により実写映画化。
小説「赤々煉恋」などで知られる作家・朱川湊人の直木賞受賞作を映画化。両親を早くに亡くし、二人きりで生きてきた兄妹の不思議な体験を描く。
1975年公開の『新幹線大爆破』を『碁盤斬り』などの草なぎ剛主演でリメイクしたサスペンス。
芥川賞作家・吉田修一が歌舞伎の世界を舞台に書き上げた小説を映画化。任侠(にんきょう)の家に生まれるも、数奇な運命によって歌舞伎界に飛び込んだ男が芸に身をささげ、歌舞伎役者としての才能を開花させていく。
ロバート・ハリスの小説「CONCLAVE」を原作に、ローマ教皇選挙を題材に描くミステリー。
現代の渋谷に転生した中国・三国時代の天才軍師・諸葛孔明の活躍を描く、原作・四葉夕卜、漫画・小川亮によるコミックを実写化したドラマ「パリピ孔明」の劇場版。
2022年にオランダで実際に発生した事件を基にしたサスペンスドラマ。アムステルダムのアップルストアに立て籠もる銃で武装した男を中心に、彼の人質にされた客や従業員、事件に対応する警察などの姿を描く。
ある麻薬取引の失敗をきっかけに、裏社会と戦うことになる刑事を描くアクション。ある政治家の息子を助け出すために刑事が裏社会へと踏み込んでいく。
お笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介が2020年に発表した小説「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を実写化したラブロマンス。
3Dブロックで構成されたバーチャル空間で、自由にものづくりや冒険を楽しめるゲーム「Minecraft(マインクラフト)」を映画化。マインクラフトの世界に偶然やって来た4人の男女の冒険を映し出す。