大山くまお

大山くまお

略歴: 編集者を経てライターに。映画、ドラマ、アニメなどについて各メディアに寄稿。「文春野球」中日ドラゴンズ監督を務める。

近況: YouTube「ダブルダイナマイトのおしゃべり映画館2022」をほぼ週1回のペースで更新中です。

サイト: https://www.youtube.com/channel/UCmdesdmNuJ2UPpAQnzkh29Q/featured

大山くまお さんの映画短評

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  • 満ち足りた家族
    子を持つ親なら間違いなく頭を抱える傑作サスペンス
    ★★★★

    名優ソル・ギョングとチャン・ドンゴンが兄弟に扮する「家族」と「倫理観」をテーマにしたサスペンス。善悪を相対的に捉えている弁護士の兄と、人助けを何より大事に考えている医者の弟。何不自由なく暮らしている彼らが大切にしている子どもたちの秘密に直面し、それぞれが煩悶することになる。子を持つ親が本作を観れば、彼らと同じように「自分ならどうする」と頭を抱えるだろう。何をすれば正しくて、何をすれば間違っているのか。子育ても社会的な倫理観を貫くのも、どちらも途轍もなく難しい。さまざまな要素が反転しながらつながっていく精緻な脚本と、ホ・ジノ監督による静けさと激しさが小波のように寄せては返す演出が見事。

  • トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
    場所はなくなっても人々の記憶と心は残り続ける
    ★★★★

    世界最大のスラムであり、古き良き猥雑な香港の象徴だった1980年代の九龍城砦を完全再現! あらゆる訳アリの人を受け入れるコンクリートと電線のジャングルのような九龍城砦の中で、友情で結ばれた男たちが縦横無尽かつ荒唐無稽に戦いまくる。今はない場所での人々の生活を再現しているという意味では、長崎の端島(軍艦島)を再現したドラマ『海に眠るダイヤモンド』に精神性は近い。場所そのものはなくなっても、そこにいた人たちの歴史と記憶と心は残り続けるし、こうやって残していかなくちゃならないのだ。民衆が立ち上がるのではなく、主人公たちの戦いに焦点が絞られているのは、香港アクション映画のロマンの残り香なのだろう。

  • 劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師
    熱狂的ファンも満足いく仕上がり
    ★★★★

    実に13年ぶりとなる『忍たま乱太郎』の劇場アニメは、渇望していた熱狂的なファンたちも間違いなく満足のいく仕上がりになったのでは(特に土井先生と一年は組ファン)。戦乱の時代らしいストーリーを進めつつ、膨大かつ魅力的なキャラクターを粒立てながら、それぞれの関係性をしっかり描き、それでいてメインターゲットとなる子どもたちを飽きさせないようにギャグを散りばめる(ミュージカルシーンもあり)。忍者アクションはロジカルな動きで尺も見せ場もたっぷり。観ている間、子どもたちも大人たちも熱狂した初期の映画『クレヨンしんちゃん』を思い出した。ゲストの大西流星と藤原丈一郎(なにわ男子)も周囲と調和していて違和感なし。

  • 終末シンフォニックトナカイ粉砕反キリスト戦争推進メタルバンド、インペイルド・レクタムが帰ってきた! 前作では閉鎖的な田舎のマッチョイズムに蔑まれていたメタルバンドの悲哀を突拍子もないギャグとともに描いていたが、大ヒットを経て今回は大幅にスケールアップ。音楽業界にはびこる商業主義とメンバー同士の不和がバンドの大きな障害となる。完全な続編なので前作は必ず見ておこう。メタルファン向けのくすぐりが増量している一方、ちょっとありがちなストーリーと説明不足が気になった。BABYMETALの出演が話題だが、制作者側の愛情が伝わってくる見せ方だった。頑固なメタル博士・クシュトラックスのいかにもな反応にも注目。

  • 市民捜査官ドッキ
    このおばさんこそが現代のヒロインだ
    ★★★★

    若い男やおじさん、若い女性が活躍するアクションものやノワールものは数多いが、おばさんが事件解決のために活躍する作品は少ない。実話をもとにした本作は、振込詐欺に遭ったおばさん(ラ・ミラン)とわちゃわちゃした友人たち(ヨム・ヘランら)が執念の追跡で凶悪な詐欺グループの首領を追い詰める。クライマックスからラストにかけてビリビリするような興奮に包まれるのは、何の力も持たないおばさんが「世の中はこんなもの」「金がある方が正しい」「これぐらいで手を打っておこう」とは真逆の行動に出るから。弱い者を踏みにじるヤツが許せなくて、いても立ってもいられない。このおばさんこそ現代のヒロインだ。

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