平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 「ホワット・イフ...?」シーズン3@ディズニー+、お気に入りは第2話「もしも...アガサがハリウッドに行ったら?」。アガサ・ハークネスと共演するのが、あの人とは!

平沢 薫 さんの映画短評

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  • ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた
    ”あの頃”との再会が、痛みと気づきを運んでくる
    ★★★★★

     実話に基づき、10代の頃に発売したアルバムが約30年後に評価されたミュージシャンを描くが、それが単純にラッキーな物語にはならないところが本作の魅力。それは主人公に敗れた夢に再び向き合う痛みをもたらすが、その一方で目を背けていたことを直視する契機にもなる。彼の若き日々を描く映像が眩しく美しく、現在との対比も胸を打つ。

     監督・脚本は『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』でザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを描いたビル・ポーラッド。ケイシー・アフレック扮する主人公の若き日を演じる、『ハニーボーイ』のノア・ジュプが初々しい。ボー・ブリッジスが演じる心から息子を信じる父親像が暖かい。

  • ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
    ビデオテープ、カセットテープの手触りが余韻を残す
    ★★★★★

     要点を捉えようとすると、それがなぜかすり抜けてしまう。そのもどかしい感覚がこの映画の魅力。どこかぼやけた感じ、ざらついた感触を、ビデオテープの映像、カセットテープの音声がさらに際立たせる。

     物語の中心となる青年が、子供の頃に弟が行方不明になる直前にその姿を見た、という事実に囚われ続ける。失踪現場の廃墟がある山は、そこまで深くないのに、なぜかその建物に辿り着けない。主人公に同行する青年は、通常は見えないものが見えるが、彼に見えているものはスクリーンに映し出されない。そこで何が起きたのか、状況証拠だけが積み上げられていく。捕まえたいのに逃れていくものが、長く余韻を引き続ける。

  • トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
    香港のラビリンス、九龍城砦が甦る
    ★★★★

     主人公は、かつて存在したが今は失われたアジアの魔窟、九龍城砦。取り壊される前、多数の人々が暮らす1980年代の九龍城砦は、昼も日光が差さず、低い天井には電線や水道管が無数にうねり、狭い路地が迷路のように続く。そんなイメージ通りの魔窟が、約10億円を投じたという巨大セットで再現され、そこに出現するのに相応しい光景と、その場所に似合う物語が描かれていく。そこに恋愛はまるでなく、人の情けと、男と男の絆の物語だけが語られていくのが清々しい。大量放出の香港映画流アクションも、この魔窟の造形を活かしたもの。登場人物が最後に独り言のように呟く「ここが無くなっても、残るものはあるだろう」の言葉が胸に響く。

  • ストップモーション
    ストップモーション・アニメには奇妙な力が宿っている
    ★★★★★

     動かないものを動かす、ストップモーション・アニメというものに宿る奇妙な力についての物語と、両者ともストップモーション・アニメのクリエイターである母と娘の支配/被支配の物語、この2つの物語が交錯して、悪夢のような事態が出現する。2人がストップモーション・アニメを製作する姿を見ていると、この手法に没頭する人が、どこかある枠から外れた特殊な感覚を持ってしまっても無理はない気がしてくる。

     物質自体の持つ力の描写も強烈。人間の身体を構成する肉と、アニメの人形を形成する蝋が、交換可能なものと化し、蝋の窪みが眼になっていく時、蝋の表面に血液が染み出していくさまから触感と匂いが伝わってくる。

  • 敵
    敵は思わぬところからやってくる
    ★★★★

     "老い"というものは恐ろしすぎるためだろう、通常はユーモラスに描かれることが多いが、この映画はそこに逃げない。おかしみはあっても、笑わせてラクにしてくれることはなく、物語に正面から向き合わせる。主人公は日々の雑事の手を抜かず、自分を律して一人暮らしをする元大学教授77歳。彼の前に、さまざまな敵がさまざまな方向からやってくる。しかし、それらは何にとっての敵なのか。なぜ、それらを敵と認識してしまうのか。いろいろなことを考えさせられる。

     明暗のコントラストの強いモノクロ映像で描かれて、現実で起きていることと妄想が同じ姿で現れて区別がつかず、それが途切れなくつながっている状態が強い印象を残す。

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