教皇選挙 (2024):映画短評
教皇選挙 (2024)
ライター5人の平均評価: 4.2
実は身近にもある、かなり共感できる話
「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガーが今回手がけるのは、心理的な戦争。だが、前作同様、終始緊迫感に満ちていて目が離せないのはさすがだ。次のローマ教皇を選ぶ選挙というと遠い世界の話のように思いがちながら、敵の過去を暴いて陥れたり、仲間内で派閥があったりなど、ここで展開されるのは、政治や企業、職場や身近なグループにも「ある、ある」な状況。しかし、意外な結果が訪れたと思ったら、まだ先があるのは予測しなかった。役者はベテランの実力派揃いで、全米映画俳優組合賞(SAG)のキャスト賞を受賞したのも納得。音楽、美術、衣装も優れている、すべてにおいてよくできた大人のスリラー。
教皇選挙の舞台裏が選挙とは何かを問いかける
教皇選挙の舞台裏に、死した教皇の生前の行動をめぐる謎解きミステリーを絡めつつ、選挙とは何か、そこでやるべきことは権力争いなのかと問いかける、今、描かれるべき物語。渦中の人間群像を演じるレイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴーらベテラン俳優たちが、みな巧い。
撮影は『アンモナイトの目覚め』のステファーヌ・フォンテーヌ。舞台はローマ郊外のバチカンだが、物語に合わせ、光は冷たく、映像は硬質。天井の高い建造物の内部に広がる大空間に、窓から差し込む光の筋。外から吹き込んでくる風。俯瞰で映し出される、小雨の中で傘をさしながら中庭を歩く教皇たちの群。幾つもの光景が強い印象を残す。
名優たちが織り成す、選挙狂騒曲
タイトルから、えらくお堅く小難しそうに見えるが、一言でいえば「選挙を執り仕切ることになった男のてんやわんやな3日間」。リベラル派である親友に票を集めたいのに、敵対する保守派やナイジェリア人の候補が台頭し、なかなか票が集まらない。そのうち、候補者の知られざる過去が明らかになり、状況は二転三転。そんな『裏切りのサーカス』の脚本家によるミステリーを、終始困り顔のレイフ・ファインズのほか、スタンリー・トゥッチやジョン・リスゴーなどの芸達者が演じるわけだから面白くないわけがないのだ! 厳戒態勢の中、判明するラストのドンデン返しも含め、オスカー脚色賞も納得の仕上がりだ。
文句なしの極上のミステリー
今年の賞レースを賑わした逸品。それも納得の極上のミステリー大作となっていました。世界最大規模の選挙とも言えるコンクラーベの裏側を徹底したリサーチと見事な脚色でテーマ性と娯楽性を高いレベルで融合させました。レイフ・ファインズを筆頭にベテランが揃った演者陣は重厚の一言。前作『西部戦線異状なし』でも見事な手腕を発揮したエドワード・ベルガーが今回も巧みな作劇を見せました。これからの監督作品は必見のリスト入り確定ですね。ある結末のあとにさらにもう一段用意されている展開に思わず”オォ!!”と唸らされました
加速する争いの生々しさ、結末の後も動揺は収まらず
冒頭こそ人間関係がわかりづらいも、中盤から物語の渦に巻き込まれ、終盤に未体験の感覚が待ち受けるという映画のダイナミズムに溢れた一作。脚本の妙(書き留めたいセリフ多数!)と実力派キャストの演技が見事に噛み合って目が離せないパターンと言える。そして結末を観届けた直後、とりあえず誰かと感想を交わしたくなる。
教皇選挙=コンクラーベは内実が門外不出。なので“想像”で描かれた部分も多いのだが、おそらく実態とかなり近いのでは。知識ゼロで観れば数々のサプライズに衝撃を受けるはず。そして票集めの画策、足の引っ張り合いは、日本の政党の代表選挙、アメリカ大統領選と濃厚に重なって悶絶的に生々しくスリリングだった。