山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • ミナリ
    愛し、支え合うのが家族のあり方と心に沁みます
    ★★★★

    西海岸からアーカンソーへ越し、農業で一旗上げたい韓国移民の男と家族の絆を描くヒューマンな物語だ。一家が体験する細々とした出来事をつなげてアメリカンドリームに翻弄された家族の揺れへと物語を進め、ホッとする着地点を見出した監督のストーリーテラーぶりが見事! 監督の両親がモデルであり、息子デヴィッドが彼の分身だろう。アメリカ生まれの少年と韓国人の祖母が徐々に絆を培う展開が微笑ましい。また彼と姉が幼いながらに両親の苦労と関係の変化を敏感に感じ取っている様が切なく、心に沁みた。子役アラン・キムは実に自然だし、ベテラン女優ユン・ヨジョンがまたもや巧みな演技を披露して物語に深い余韻を残す。

  • ワン・モア・ライフ!
    人生のロスタイム、あなただったらどう使う?
    ★★★★★

    バイク事故であの世に向かう途中の中年男パオロがロスタイム92分を手に入れ、蘇って生前の悔いをチャラにしようとするのだけど、やたらに寄り道するイタリア流にイラッ。しかも悔いる部分が浮気なイタリア男そのもので、そんな夫にほぼ愛想をつかしている妻の信頼を短時間で取り戻せるのは無理じゃないかと懐疑的に気持ちになる。こりゃもう、男性目線のファンタジーと目くじら立てずに笑うしかないな。とはいえ、私の笑いのツボが監督とズレていて、厳しい。パオロを見張る天国の係員がもっといい仕事してくれると良かったのだが……。ま、死ぬと分かっていても性格が変わらないパオロが実に人間臭い男って映画でしたね。

  • ビバリウム
    想像力を駆使したい独創的な野心作
    ★★★★★

    あのスティーブン・キングが驚いた、というのも納得の野心的で独創的な物語だ。新居を探すカップルが案内された新興住宅地の街並みを見て、ディズニーによる理想住宅「セレブレーション」を皮肉った風刺劇なのかと思ったら、大間違い。迷宮に閉じ込められたカップルが恐怖と疑心暗鬼で疲弊していき、SF的としか思えない子供の存在が二人の神経を逆撫でする。カップルが住まわせられる9番地の住宅は果たして地球なの? なぜ二人は代理親に選ばれたの?  時間経過も含めて全てがミステリアスで、想像力がフル回転する。これぞ映画鑑賞の楽しみ!人工的な街並みや加工食品へもアンチをはじめ、現代社会への揶揄がぎっしり詰まった傑作。

  • アウトポスト
    この前哨基地を作った人間は戦犯じゃないの?
    ★★★★

    個人的に信頼するジャーナリスト、ジェイク・タッパーが執筆した実話小説の映画化で、最初から最後まで目が釘付け。タリバン兵流入を防ぐためにアフガニスタンに作った前哨基地の危険さは素人目にも明らかだし、敵の襲撃だけでなく政治的な思惑に翻弄される兵士の運命に胸が痛む。前半で状況や兵士の人となりを明らかにし、緊張感を高める構成もわかりやすい。後半は米陸軍史最悪の決戦の一つとなった「カムデシュの戦い」にたっぷり時間を割き、見ているだけで心拍数が上がる! 勇気の振り絞り方も恐怖の克服も兵士それぞれだし、怯える兵士の描写もリアルだ。プロパガンダ映画と思う人もいるだろうが、勇敢な兵士の壮絶なサバイバルだ。

  • 野球少女
    ガラスの天井を突き破る少女の根性に拍手!
    ★★★★

    野球を愛する少女スインがプロ選手を目指す話で、立ち塞がる壁を少しずつ乗り越えていく展開に普遍性がある。幼い頃は男子と肩を並べていられた少女が直面するのは体力差だけでなく、「女の子はプロにはなれない」という偏見めいた考え方。男女平等の世界のはずが男性から「女のくせに」などと言われたことがある女性は少なくなく、限界に挑み続けるヒロインの気持ちに共感するだろう。努力しても夢が叶うとは限らないけれど、スインを見ていると挑戦することに意味があると感じる。『梨泰院クラス』でも印象的だったイ・ジュヨンが体を張った熱演を披露する! ただね、プロ選手を目指しても勉強を疎かにしてはいけないと思いました。

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