山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • カポネ
    忘却の彼方に! 汝の名はカポネなり
    ★★★★★

    暗黒街の顔役だったカポネはこれまで映画やドラマでグラマラスな描かれ方をされることが多かったが、本作でT・ハーディが演じるギャングは哀れそのもの。ベッドで脱糞したり、妄想と現実の区別がつかなくなったり、『オズの魔法使い』を見ながら歌い出したり。言葉も不明瞭で、字幕無しだと意味不明な場面も多数。梅毒って怖い! 老けメイクと作り込んだ声の演技が光るハーディの熱演のおかげで、正気を失いつつある老ギャングとリア王の晩年が被り、実話ドラマに演劇的効果をもたらされる。忘却の彼方に向かうカポネに振り回されるFBI捜査官も登場するが、この部分ははっきり言って不要にしか思えない。

  • ステージ・マザー
    寛容な心があれば世界はどんどん広がる
    ★★★★★

    敬虔なクリスチャンである保守的なテキサス人がサンフランシスコのカストロ通りでゲイ・バーを経営することに!? ヒトラーがシナゴーグに通うくらいにあり得なさそうな設定に母子愛や女性の自立を絡め、心温まる物語に仕上げている。ゲイというだけで息子を突き放した罪悪感に苛まされていたものの、LGBTQ +の世界を徐々に受け入れることで、今まで知らなかった自分の側面に気づくヒロインをJ・ウィーヴァーがユーモラスに熱演。『タンジェリン』の好演が印象的だったマイア・テイラーをはじめとするトランスジェンダー役者によるパフォーマンスも楽しめるし、LGBTQ +の世界入門としてもとっつきやすいはず。

  • MISS ミス・フランスになりたい!
    自分らしさは自分で決めること!
    ★★★★★

    ノンバイナリーなアレックスのミス・フランス挑戦に多様性と寛容がもたらす心の豊かさや美の概念、アイデンティティの自覚といった多重のテーマを絡めた意欲作だ。主人公を取り巻くドラッグクイーンの娼婦や移民で構成された擬似家族がかしましく交わす会話に深い真実が込められていて、人間には自虐と思いやりが必要と納得してしまう。外見重視や性差別の観点で語られることが増えたミスコン批判を盛り込みつつも、出場者同志の友情や共闘も描かれるのは監督の優しさだろう。おかげでミスコンの好感度UP! ジェンダーレスモデルとして活躍するアレクサンドル・ヴェテールの存在が際立っている。

  • 夏時間
    夏、少女は少し大人になる
    ★★★★

    父親が家を失ったため、祖父の家に身を寄せることになった少女オクジュの胸に去来する思いが痛いほどよくわかった。家を出た母親への複雑な思いやノー天気に思える弟への苛立ち、自我が芽生えてきた彼女の“可愛くなりたい願望”と初恋。祖父の家の一室に蚊帳という「マイ砦」を確保して、周囲と距離を置きながらも子供っぽさが残るオクジュが愛おしい。彼女を14~15歳の自分と重ねる観客は多いだろう。家庭菜園で採れた野菜やフルーツを味わい、一家団欒が楽しいはずの夏休みに、少しだけ大人になる少女が眩しい。彼女を見守る大人たちも実にリアルに描かれる。これがデビューというユン・ダンビ監督の才能に惚れた!

  • レンブラントは誰の手に
    レンブラント絵画が暴く人間の本性と欲望
    ★★★★★

    レンブラント絵画購入という庶民には考えられない状況で起きた騒動がドラマティック。若き画商ヤン・シックス氏の隠れた承認要求やレンブラント専門家の矜持、国家の威信などがさまざまに絡み合う本作はサスペンスとコメディが混在するシェイクスピア戯曲のよう。ドキュメンタリーとは思えない展開に仕上げた編集の妙に唸る。カタログに掲載された作家不詳の肖像画の瞳、さらには実物を見て確信を深めたヤンの審美眼は素人目には名探偵のようで素晴らしいが、17世紀まで遡るヤン・コレクションに囲まれて育てば当然? しかし大金が絡む貴重な芸術は人間の本性や欲望まで暴くわけで、それが最高の見どころだ。

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