山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • ムルゲ 王朝の怪物
    陰謀とか裏切りのメタファーと思ったら、さにあらず
    ★★★★★

    韓国の王朝ものとなると、宮廷内の党争、うごめく陰謀と裏切りを徳のある御仁が正すというのがお約束。中宗時代の実話が元となっているので、怪物はメタファーと思いきや、意外な展開。そのヒネリも「朝鮮王朝実録」からの発想というから、ホ・ジョンホ監督の「行間を読む力」が生きた。随所にユーモアを忍ばせつつ、庶民の目線で事件を追うので、物語に引き込まれる。唐絵に描かれた狛犬のような造形の怪物を巨悪にはしない、ゴジラ的発想もいい。切ない出自まで描写されるので、後半は暴れっぷりが痛快に思えるほどだ。眉目秀麗な宮廷武官を演じるチェ・ウシクが『パラサイト』とは一味違う、男らしさを披露。

  • ジュディ 虹の彼方に
    ハリウッド流に逆らって、潰された才能に涙
    ★★★★

    抜群の歌唱力で人気女優に上り詰めながら夭逝したジュディ・ガーランド。相当のファンでないと興味がないだろう彼女の晩年からハリウッドの恐ろしさを浮かび上がらせる業界ドラマだ。思春期の少女にダイエット(実際は覚せい剤使用)を強制し、スターダムという名の鎖でがんじがらめにする。身を持ち崩すのも当然だ。それでも業界のルールに従えば温情も得られるのだが、自身のルールを貫くジュディの壊れかけた姿をR・ゼルヴィガーがスクリーンに蘇らせた。口パクと思うほど歌声もジュディにそっくりで、賞レース独占も納得。#MeTooの今だからこそのフェミニスト映画であり、さまざまな意味を汲み取れる副題も素敵だ。

  • 子どもたちをよろしく
    子どもが不幸せな世界であってはいけないはずなのに…。
    ★★★★

    児童虐待死やいじめについての報道が後を立たず、胸が痛い。貧困や育児放棄、DV、いじめと子どもを取り巻く状況が悪化しているのは間違いない。本作はそんな現実を描き、大人のせいで居場所を失う子どもの心の叫びを伝えてくれる。稼ぎを全てギャンブルに注ぎ込んだり、再婚相手の娘に性暴力を繰り返したり、夫の異常行為を見て見ぬふりをしたり。親の情けなさや周囲の無関心がいじめと被害者を生む、この負の連鎖をたち切るはずの行政や福祉の税弱さが悲しい。しかし、だからといって何かアクションを起こすでもない自分自身が一番ダメなのだと自戒する。いじめられっ子を演じた椿三期がとても印象的で、忘れ難い。

  • ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像
    家族よりも芸術に重きを置いた老画商の“気づき”とは?
    ★★★★★

    老いた画商の最後の賭けに二重の意味を持たせた脚本と、日本人にも共通する“みなまで言うな”的なフィンランド人のメンタリティが胸に沁みた。アートと山っ気ひと筋で生きてきた主人公オラヴィが、孫オットーとの交流で人生に欠けていたあることに気づく過程は予想がつくが、彼を愛されキャラにしなかったのは脚本家A・ヘイナマーの英断だ。欠点が見えるからこそオラヴィの人間くささに共感できるし、彼の“気づき”の意味も深まる。オラヴィがI・レーピン作ではと目を付ける署名無き絵画のオリジンをめぐる謎解きも重要なのだが、美術館キュレーターの見解と私個人の考えが一致して、我が意を得たりとニンマリ。ノンフィクションですけどね。

  • PMC:ザ・バンカー
    荒唐無稽だけど、吸引力が物凄いアクション大作
    ★★★★

    DMZの地下に南北を結ぶトンネルがあるという前提も北朝鮮をめぐっての大国の野望も荒唐無稽なのに、冒頭からグイグイ引き込まれる。猛スピードの展開と派手なアクション、ドローンなどを駆使した斬新なカメラワーク、そして傭兵エイハブ周りの人間ドラマが見事に絡み合い、物凄い吸引力を発揮するのだ。現代の政治事情をしっかり盛り込んだ脚本を、緩急のある演出でエンターテインメントに仕上げたキム・ビョンウ監督に拍手。英語セリフもしっかりこなし、ハリウッド俳優に負けないハ・ジョンウも素晴らしく、『テロ、ライブ』コンビ復活がうれしい。それにしても、最近エンタメ界でも存在感を発揮する金正恩ってすごいな~。

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