略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
「最近の若者は!?」なんて言う大人にはなりたくなかったのに、実際は口走ってる? 誰もがいつの間にか社会と折り合いをつけるわけで、本作に登場するのはその微妙な時期を迎えた若者。“楽しい今”を過ごしつつも、無策な自分にイラついたり、自由に生きている(ように見える)他者に嫉妬したり。その気持ち、わかるよ~。稀薄に見えながらも濃密だったり、逆だったりという人間関係の真髄に触れた瞬間、これが普遍的な物語なのだと心中でうなった。岡崎京子の思いを掴み取り、自身の哲学を加えた二宮健監督の手腕が素晴らしい! 門脇麦や村上虹郎を筆頭とする若手役者が醸し出す空気感も圧巻で、ミレニアルズのパワーに気圧された。
1972年の南北首脳会談に備えてKCIAが金日成もどきを作り上げるという前提がまず興味深く、彼に主体思想まで叩き込むあたりのエクストリームさもさもありなん。ソル・ギョングが金日成?と懐疑的に見始めたが、大根役者がどんどんエキセントリックに変貌する過程で憑依役者の真髄を満喫した。しかも認知症になってなお、初主演にこだわる役者魂に感涙。そんな役者バカ一代の父親を持った息子テシクの哀切はさぞかしと思うし、22年も溜め込んだ父親への複雑な思いを徐々に吐き出すP・ヘイルのニュアンス溢れる演技も素晴らしい。演技派役者の丁々発止のやりとり、脇を固めた曲者役者の巧妙な演技設計にしびれっぱなし。
美人でスリムで、抜群の歌唱力を持つ大型新人としてデビューしたホイットニー。K・マクドナルド監督は、歌姫が堕ちていった軌跡を辿りつつ、さまざまな原因を容赦なく暴く。誘引となった家族の証言や本人の発言も赤裸々で、ホイットニーの人生が決して華美なだけでなかったと実感する。メディアが作り上げた虚像ホイットニーの真実を伝える作品で、どん底にいたときの彼女の切なさたるや。同じ境遇にあったMJとの交友や幼児期の傷など身近な人しか知らなかった事実も明らかになる点を含め、実にオーセンティックな伝記映画と言える。頂点を極めたら、あとは落ちるだけなのか? エンタメ関係者やアイドル志願者は必見!
冷戦の雪解けを感じさせた『ロッキー4/炎の友情』だが、敗残者ドラゴの胸には屈折した思いが澱のように溜まっていたという設定がいい! 戦闘マシーンに育て上げた息子をかつてリングで殺した男の息子に挑ませるなんてドラゴの歪んだメンタルも物語を盛り上げる。試合の流れやセコンド陣などはボクサーとしての矜持が心にしみた『ロッキー4』を踏襲しつつ、父子の愛情をからませる展開がいかにも本シリーズらしい。おセンチ上等! もちろんヘビー級の試合は迫力たっぷり。前作よりバルクアップしたM・B・ジョーダンと超マッチョなF・ムンテアヌが繰り広げる死闘は目を覆うほどで、パンチの応酬を見てるだけでも痛さが伝わってくる。
セックス・ピストルズとともにパンクシーンを疾走し、今では王族も身につけるドレスをデザインするV・ウエストウッドの人生は誰もが想像するように破天荒だけど、きちっと筋が通っていることがよくわかる。服のデザインも政治信条も体制に流されることなく、自分流を貫く。今は環境問題に夢中のよう。ブランドの成り立ちや元パートナーとの確執を交えながら明らかになるのは決して進化を止めないヴィヴィアンの姿勢で、そのエネルギッシュな生き方に感心するのみ。監督はそんな彼女から本音を引き出し、受け身とも思える部分をカメラにさらしたが、ご本人は仕上がりへの不満を公表。こういう側面は相変わらずパンクですな。