略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
少年ふたりの友情の揺れを描いている点で最初は『怪物』を連想したが、こちらの方が年齢は1~2歳ほど上か。この年頃の1歳差は大きく、その大きさゆえに友情の破綻も悲劇性が強い。
映画が重きを置くのは主人公レオの表情で、感情の機微が実によくとらえられている。重要な誰かに向けられているときのカメラ目線は鋭く、観客にはその表情が強烈に焼き付くだろう。
思春期の息苦しさが、そのまま現代社会の生きづらさにリンクする点も絶妙。ドン監督は自身の体験を基にしていると語るが、文科系少年がヘテロアピールのために無理して体育会系っぽく振舞わねばならないローティーン環境がリアルで、見ていて胸が痛い。ともかく必見。
「アルブスの少女ハイジ」の後日談を70年代グラインドハウス風に作ったら、こうなった! いやはや『マチェーテ』もビックリの快(怪?)作。
ハイジが恋人ペーター(有色人種!)と納屋で×××するという設定だけでもぶっ飛んでいるが、『ナチス女収容所』シリーズのような女囚拷問から『キル・ビルVol.2』的な特訓を経て、独裁者に立ち向かうのだから、面白ければ何でもアリの世界。
エロや人体破壊、クリーチャー、反体制、グルーヴィーな音楽まで徹底的にグラインドハウス。クラウドファンディング製作で、“映画ファンの映画への愛だけで作られた”という冒頭の言葉もある意味、偽りナシだ。イキの良さに★オマケ。
『X エックス』はとてつもなく面白いホラーだったが、その前日談となる本作はエグいスプラッター色もそのままに、まったく異なるカラーを出してきた。
不自然なほどの笑顔が特徴的な戦前のミュージカル色を生かしながら、薄氷を踏むような不気味さを漂わせ、ここぞという場面でショック描写が。前作とはベクトルがやや異なるミア・ゴスの怪演にも目を見張った。
前作の老婆の残虐性や無邪気さ、性欲過多をきっちり踏まえながらも、ヒロインの孤独や不満、いらだちが見据えられ、暴走に説得力を宿らせる。トリロジーをしめくくる次作も期待大!
いわゆる“羅生門”形式で、3つの視点で事実が浮かび上がる。そういう意味ではサスペンスとして楽しめるが、そこは是枝作品、主眼は別に置かれている。
母の視点から児童虐待、教師の視点から学校のお役所体質と、大人の問題が浮かび上がり、一方で子どもの問題であるいじめがある。しかし、それらの訴えを声高に感じないのは、子どもの真っすぐなまなざしが強調されているからだろう。
大人の目は曇るが、先入観のない子どもの目は迷いがあろうと晴れている。いろいろと考えさせられる要素はあるが、まずはこの凛々しき魅力を体感したい。必見。
R・クロウが聖職者役と聞くと疑問符が湧いてこないでもないが、悪魔と戦うエクソシストなのだから、これくらいコワモテの方がいい!? ともかく、これがなかなかのハマリ役。
実在の神父の回顧録を基にしてはいるが、リアルというよりエンタメ性重視。悪魔祓いの儀式の緊迫感の一方で、中世からの因縁を探る奔走に探偵物のような味もあり、興味を引かれる。大らかで頼もしいが、飄々としたところもある主人公のキャラ設定もクロウが演じたことで印象度が増した。
調査の相棒となる若い神父とのコンビネーションも面白く、F・ネロふんするローマ教皇を含め、この組み合わせでの続編を期待したくなる。