略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
フリーハンドで描いたような線と、シンプルかつメリハリの効いた色彩。CGアニメの逆を行くアナログ感覚が、まず目を引く。
通常のアニメ制作とは異なり、まずセリフを収録してから作画に取りかかったとのこと。ビジュアルが生き生きとしているのは、その効果もあるのだろう。何が何でもチキンを食べたい、そんな子ども心の自由な欲求が躍動的にとらえられている。
監督は子どもに見せるために作ったというが大人が見ても面白く、心の暗闇から引き出される記憶や食肉に関する考察など、興味深い要素も。物語のリズムがそのまま重なり、加速する音楽も巧い。
『オーメン』の前日談は、ありそうでなかった企画。時代のうねりという事実を踏まえつつ、そこに権力の野心を絡めた興味深いドラマが展開する。
舞台が1970年代のローマというだけでホラーファンとしてはときめき、ジャーロ映画のような様式美にオカルトを絡めたつくりに見入る。
見習いシスターを主人公に据えた点も技ありで、女性が悪魔と、そして悪魔的なシステムと格闘する展開が面白い。主演のN・T・フリーの無垢な存在感に加え、A・スティーブンソン監督の丹念な演出も光る。ガールパワーの物語としても見応えあり。
端正な映画という第一印象。過剰なロマンチシズムや大げさなドラマ性を削ぎ落し、シンプルに、素朴に愛のおとぎ話を語る。
韓国と北米という距離に隔てられた幼馴染みふたりの関係と、それぞれの異なる人生の物語。スタートは一緒でも離れて生きると、たどり着く場所は違ってくる。そんな彼らの、それぞれの成長を見据え、飲み会や仕事などの日常の風景にさえ気持ちがにじむ心憎いつくり。
「デート映画ではなくて愛の映画」とソン監督は本作について語るが、それも納得。監督デビュー作にして、これほど洗練された作品を撮ったことに驚かされる。必見。
『ボーグマン』で観客を仰天させたオランダの異才ファン・バーメルダムが、よりシュールな展開で叩きつける問題作。
劇団員の間の葛藤のドラマのように映画は始まり、物語は不穏なムードをどんどん高めていく。ところが、序盤から宗教的なミッションという異物がジワジワと混ざってゆき、そこに話がシフトしたと思いきや、クライマックスでは別次元へと発展。これには、やはり仰天するしかない。
詳しく語れないのは歯がゆいが、はっきりしているのは一般的なドラマツルギーに収まる作品ではないということ。バーメルダムの新境地とも言えるかもしれない。
子どもの頃に観たプロレス中継に“鉄の爪”と呼ばれる外国人レスラーがそういえばいたなあと、思い出した。もちろん当時はこのレスラー一族の残酷物語など知る由もない。
父と同じ道を歩みプロレスラーとなった次男ケビンの視点で物語は展開する。父のスパルタ教育により弟たちもレスラーとして成功していくが、フィジカルが鍛えられる一方でメンタルが弱っていく皮肉。
ダーキン監督は『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で洗脳を扱ったが、本作にも父による息子たちへの“洗脳”が垣間見える。むろん背後には父性愛があるのだが、それが悲劇を引き起こしたのは、やはり皮肉としか言いようがない。