略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
父デビッド・クローネンバーグの作品における偏愛の粘着性に対して、息子ブランドンが描く偏愛はドライ。『ポゼッサー』に続くこの新作でも、そのスタンスは変わらない。
そのリゾート地で観光客は何をしても許されるという極端な制度。その下で犯罪に溺れ、特権意識を満たす金持ちたちのエスカレートする行動。監督はこの状況を冷徹に観察し、ときにバイオレンスをまじえながら、衝撃的な物語を組み立てていく。
危険なゲームに溺れ、良心の呵責を持たなくなっていく富裕層の心模様は本作のもっとも恐ろしいポイント。そのひとりにふんしたミア・ゴスの怪演は怖すぎて忘れ難い。
19世紀のデンマークからアイスランドへと渡る、宣教の過酷な旅。それは肉体だけでなく精神をも徹底的に痛めつけるものだった。正方形に近い昔のカメラのフレームを模した映像のサイズは、この痛々しい状況をリアルに伝える。
主人公の若い宣教師は最初こそ信仰の理想に燃えるマジメな存在に見えたが、写真撮影への執着にまず俗っぽさがうかがえ、アイスランドに着いてからは欲望やヘイトといった聖職者らしからぬ内面がジワジワと浮かび上がる。過酷な旅で精神を痛めつけられた結果か?
いずれにしても愚かな人間の寓話に変わりはなく、荒々しくも美しい自然の風景の中で、人間の弱さはいっそう際立つ。鮮烈!
前作『~アフターライフ』のジュブナイル性を維持しつつ、舞台をバスターズの本拠地ニューヨークに移す。このアイデアが、まずうまい。
元祖バスターズの結集はもちろん、その拠点となる旧消防署、縁の地やキャラなどの再登場は、言うまでもなくファンには嬉しい。一方で、まだ子どもであるヒロインの大人社会との格闘にも目を引かれる。主演のM・グレイスは今回も好演で、繊細な青春ドラマの部分をしっかり背負って立つ。
NYが舞台となったことによりパニックスペクタクルの規模が大きくなったことも見逃せない。海洋から都市部へと氷結が進行し、尖った氷柱が次々と突き出る天変地異描写は独創的で面白い。
第二次世界大戦後の赤狩りの公聴会から過去へとフラッシュバックし、行ったり来たりを繰り返す、ノーラン作品らしい時間軸。そこで描かれる原爆の父オッペンハイマーの苦悩は深く、重い。
量子力学の研究者として天才的な視点を持つも、人類を滅亡させる兵器を作ってしまった主人公。現在と過去を行き来する物語は、栄光のはかなさや後悔の重さを強調するかのよう。
一方で、過去を反省することなく赤狩りという次のフェーズを渡り歩こうとする者もいる。そういう意味では人類の、さらには歴史の愚かさを浮き彫りにした作品。この重厚さを受け止めるには覚悟が要る。
イルミネーションのオリジナル脚本作品としては7年ぶり。鳥類を主人公にしている点が旨みといえる。
北米からカリブへと向かう冒険を俯瞰からとらえた映像に飛翔のカタルシスが宿る。主人公であるカモ一家の長が、飛ぶことに躊躇しているという設定が生き、いざ飛んだときの気持ちよさは格別だ。
冒険を避けたい父親という設定は『ファインディング・ニモ』の鳥類バージョンといった趣。こちらはよりアップテンポで、ユーモアを重視する。あっさりしている気がしないでもないが、ファミリームービーとして十分に楽しめる作品。