猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • 大いなる自由
    残酷な状況でも失われない人間の愛と優しさに感動
    ★★★★

    オープニングは、公衆トイレの隠しカメラで捉えられたゲイの男性たちの録画映像。そこに映っていた男たちは、犯罪人として刑務所に入れられるのだ。なんと非人間的で不条理なことか。自分のアイデンティティを守る主人公ハンスは、もはや刑務所の常連。仲間からも強いと尊敬される彼だが、半世紀近くもの時間をそこで過ごしたら、どうなるのだろう。3つの時代をスムーズかつ効果的に移動しつつ、マイゼ監督は、メロドラマにすることなく、静かに、丁寧に、登場人物たちの変化を描いていく。残酷な状況の中でも失われない人間の優しさ、思いやり、愛に感動。とても意外で、違った解釈ができるラストシーンは、多くのことを考えさせる。

  • ワム!
    本人たちの話を聞きつつあの瞬間をもう一度生きる
    ★★★★

    リアルタイムでワム!の歌を聴いて青春時代を送った者としては、ときめきっぱなし。あの瞬間をもう一度体験させてもらいつつ、それぞれの歌が生まれた背景や意味したこと、初めの頃ヒットを出しても全然お金をもらえなかったことなど、興味深い話をたっぷり聞けるのだ。それも、本人たちの肉声を通じて。そんな中で最も感動させられるのは、ふたりの友情の強さ。ジョージ・マイケルが圧倒的に目立ったが、アンドリュー・リッジリーなくしてマイケルのキャリアはありえなかった。ワム!としてはたった4年しか活動しなかったことに改めて驚かされつつ、80年代の文化に大きく貢献をしたこのふたりに改めて敬意を捧げたい。

  • CLOSE/クロース
    この年齢だからこその、繊細で切ない物語
    ★★★★★

    純粋無垢な子供からヤングアダルトへと移行する13歳という年齢だからこその物語。とても切なくて、悲しくて、観終わった後もいつまでも心から離れない。レオとレミがお互いの人生でかけがえのない友人同士であること、ふたりの性格の違いが冒頭からしっかり描かれていることが、ストーリーに説得力と、より強い感情を持たせる。ふたりを演じる俳優がこれで映画デビューする新人というのも驚き。これは極端な例だとしても、成長には時に痛みが伴うもの。一見明るく平和であっても、中学校というところは意図せずして残酷になりえる。そして友情は些細なことで壊れてしまったりする。そんなことをいろいろ考えさせる、繊細で美しい傑作。

  • Pearl パール
    ホラー映画の怖い人にこれほど共感できるとは
    ★★★★

    「X エックス」のプレクエルで、オリジンストーリー。だが、こちらのほうがあらゆる意味でもっと優れている。主人公パールが複雑で、夢、希望、絶望、苦悩を抱えたひとりの若い女性としてしっかり書かれているのが、一番の勝因。ホラー映画で怖いことをする人にここまで共感できたことがあっただろうか。現実から目を背けるうちに、彼女の中でそれがごっちゃになっていく様子がよくわかる。ジャンルへの偏見のせいで賞レースには引っかかってこなかったものの、ミア・ゴスの演技はまさにトップクラス。数分間、ノーカットでひとり語りしながら微妙に感情、表情が変わっていくクライマックスにはとりわけ圧倒された。

  • ラン・ラビット・ラン
    「メディア王~」のサラ・スヌックは今回もさすが
    ★★★★★

    「メディア王~華麗なる一族~」で大注目されたサラ・スヌック(注:これが正しい発音)が故郷南オーストラリアに戻って作ったインディーズ映画。彼女の演技は今回もさすが。7歳の誕生日を機に行動がおかしくなっていくひとり娘を演じる子役も、彼女からあれだけのものを引き出した大人たちも立派だ。7歳という数字に意味があるのは後にわかっていくし、ウサギは「不思議の国のアリス」から来ているのかと思われる。そういった最初の設定やヒントはおもしろいものの、やがてホラーでよく使われるパターンがあちこちに出てきて新鮮さがなくなるのが残念。不気味な音楽や小手先で盛り上げるには、やはり限界がある。

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