まほの[子連れ]ハリウッドへの道39
ハリウッドの病んだ人々~もじゃ画家の巻~ |
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ハリウッドには、いろんな人たちが生息している。俳優の卵、デザイナーの卵、ルンペンのおっちゃん、貧乏な日本人、そして病んだ人々。 彼と初めて出会ったのは、メルローズの横断歩道。私が、ルームメイトの飼っていた犬を散歩中、信号待ちをしてたときのことだった。 右のこめかみに鋭い視線を感じふっと隣ををみてみると、私の2ミリ横に、もじゃもじゃ頭のお兄さんともおっさんとも言えぬ男がくわっと目を見開いて私を凝視している。ち、近い、近すぎるぜ。こ、こわいー。 さっと目をそらすと 「きみは、絵を見たいか」 「絵を見たいか」 「絵を見たいか」 間髪入れずに三回連続で質問を浴びせられたっ。 「オ、、、オッ」 ケーを待たずに、モジャ画家は歌いだす。表情は相変わらず目え見開いたままだ。 「ジャンボッジャンボッジャンボッ」 もしや紙芝居かい? なんて、ちょっぴり期待していると手に持っていた、画板の中から、絵を取りだして見せてくれた。ジャンボとは全く関係ないただのバラの絵だった。変な人がいるなあ、さすがハリウッド!なんて気分でみていると、奴は満足したらしくその日はそのまま去っていった。 数日後、今度はジェスと訪れたカフェで又そいつに会った。とりあえず、怖いからちょっと離れて座っていたら、モジャ画家が背後から威勢よく話しかけてきた。 「イズユアドッグアラーイブ??(君の犬は生きてますか)」 ひいっ。こいつ絶対、ヤバイ。もう♪ジャンボッ♪の時から何となくわかってたけど。 「イエース。センキューッ」 ジェスだった。彼女は何にも知らずに、答えてる。多分、ハリウッド系な人(ちょっと変な話かたするアーティスト)とでも思ってるんでしょうよ。ば、ばかばかー!この人ヤバイんだってー。 目で必死で合図する私にも全くきづかず、誰にでも気さくなジェスはいつも通りフレンドリーに話しかけだした。(ジェスだけじゃないけど、この町の人はとりあえず目が合うと、「ハイ」っていうんだよね。これって、アメリカンな風習なのか?!) 「…あのいぬ私のいぬ何だー。あっあなた、画家なの?」 (あああ、ジェス。またこいつ、ジャンボジャンボ始めるぞおお) モジャ画家は、いきなり立ち上がった。 (来たー) 「ツー、ワン、ゼロ」 病んでる人は、カウントすらおかしい。 モジャ画家はかくかく動き出した。もちろん目はイッタまんまだ。ロボットダンスかなんかを踊っているらしい。 「あなた、画家なの?」 このたわいない問いに対するこの動き。やっぱりこの人ただもんじゃねえ。 ジェスも奴から尋常じゃない何かを、察知したみたいで、さっと視線をそらしてきた。よしよし。もう、この人のことは気にせずお茶しようねー。なんて簡単には、いかないのよー! モジャ画家は、私たちの“素知らぬ作戦”にカチンと来たらしく、私たちの真後ろに席を移動し「次に、言葉を発したらおまえは死ぬ」 を連発。モ、モジャ画家エスカレートだぜ。コエー。 石になったチョー小心の私に対して、いつでも強気なジェスは気にせずしゃべりまくる。 私の頭の中…この画家はもちろん銃を持ってて、逆上して、銃を乱射して、このメルローズのカフェで、カフェラテを飲みながら殺されてしまうはかない森田真帆の終焉。 現実には、我らがジェス様の強気な態度が功を奏し、モジャ画家はまたふらりと去っていった。 来週に続く…
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