そんな師弟関係とも言える二人が、この『スパイ・ゲーム』では師匠と愛弟子という設定で共演。これほどうってつけのキャスティングはないっ! レッドフォード扮するCIA工作員のネイサン・ミュアーが、キレ者のスパイとして活躍するブラピ演じるビショップに注ぐ視線。まるで、「ブラピよ、いい役者に育ったな」といった感慨に浸っているかのように見えてしまう。だからこそ、窮地に陥ったビジョップを引退間近のミュアーが救出するというストーリーが、一層面
白くなるのだ。
しかもだ。政治的理由から、ビショップを見捨てようとしている冷徹なCIA上層部に対して、これまで培った知識と経験の全てを賭けて孤軍奮闘するミュアー。この働きぶりはスパイ映画の名作『コンドル』('75)で、たった一人でCIA上層部の陰謀に立ち向かった若き日のレッドフォードの姿を彷ふつとさせる。また、頭が固く陰険なCIA局員を小気味よく出し抜くあたりは、知能犯の泥棒を演じた『ホット・ロック』('72)に通
じる粋なノリだ。おまけにツイードのジャケットとダンガリーのシャツ、トレンチコートなどのコスチュームをさらりと着こなすダンディさ。こんなオヤジ、ざらにはいない。
確かに、もはやスクリーンでのアップはツラい。だが、レッドフォードは深く刻み込まれたそのシワ面
で、年輪を重ねた男ならではの美学を見せつける。クライマックスが近づくにつれて、愛弟子のために一世一代の作戦を立て、スパイとしての有終の美を飾るというミュアーのこだわりと、俳優レッドフォードの築いてきたキャリアが否応なしにだぶってくる。いや、もうホント、往年のレッドフォードファンにとってはうれし涙もの。過去の彼を知らないあなたは、オヤジ俳優でなければ出せない男のカッコ良さというものに、ぜひ開眼して欲しいっ!
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