森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
闇夜のコンビニに、突如現る三台のヤン車。重低音の音楽のドンッドンッっていう音だけが店内にはかすかに聞こえてくる。
平和だったコンビニが一気に、ハリウッド映画モードに切り替わる。車から、のっそりとおりてきたスキンヘッドに、タンクトップのあんちゃん達がついに店のドアを開いた。
「ひ、ひいい」
とりあえず、兄ちゃんたちは、三つに分かれてた。一つ目は、まあ日本で言えば三木道山。スキンに、タンクトップに、白のパンツ。うーん。ギャングだわ。次に来たのは、まあ、ガチンコの大和先生かねえ。顔は思いっきりメキシカンだけど、グラサンも、やあさん(?)服もぴったり決まってるのに、ちょっとおやじ。きっと先輩系なんでしょう。
これだけでも、結構なびびりもんだけど、いやいやそんなもんじゃあごぜえやせん。私が、もっとも驚いたのはいっちばん最後に登場したグループ。あのね、この人たちは、前出の二つのグループよりはるかに怖いオーラをもっとりました。きっと、人の一人や二人は殺めたことあるでしょう。そんな目をしているわけさ。
服装はいたって普通のB-BOY系ぶかぶかシャツにぶかぶかパンツ。でもね!!! なにがやばいって、アゴにね! ハ、ハチってはいってんのさ。分かりますかい? もう一度説明いたしますが、アゴのとこに、油性マジックで書いたような感じで数字の8が書いてあんのよその人。いや、書いてんじゃねえ。むしろ、彫ってあると言ったほうが分かりやすいでしょうな。もう、それはそれは、ひらベったーくなったハチなんだけどね。い、一体なんなんだーっ。それって、今まで付き合った彼女の数? それってもしや今まで殺した人間の数なんですかあああ???!!!
私は、もはや膀胱破裂、明日からは膀胱炎再発。 こ、こんな怖いの皆でイズ旅行で怖い話した以外だー。
兄ちゃん達はでかい顔して、コンビニ内をひたすらうろつく。私は、とにかくレジの兄ちゃんがさっさと会計してくれっと願うのみ。早くレジ打ちやがれっ。と、鋭い視線を送るも、兄ちゃんは、ギャング団に魂を吸い取られてしまった模様。すっかり固まってる。
も、もういいわ。カップラーメンのことはもう忘れよう。もう何も買わなくていいから、とにかくこの危険コンビニを出ちまおう。ソローリそろりと、出口に向かおうとした私に、ギャング団の一人が気付いた。
「ほにゃほにゃほにゃ」(スパニッシュのため解読不可能)
「ホニャホニャホニャーーー、わっはっはー」
わ、笑ってるよオイ。何言ってんだろう。もしかしたら、すごいやなこと言ってたのかもしれないけど、このとき私は本能的なナルシシズムを駆使し、兄ちゃん達が、「こいつあ、きれいなスケがいるぜ。ひゅーひゅー」 と言っていると思い込んだ。
そういえば、昨日ルームメイトにちょっとスパニッシュの挨拶教えてもらったわ。
「オ、オラー。コモエスタース」
蚊の鳴くような声で、挨拶をしてみると、ちょっとウケた。お。つかんだか?…ってそれどころじゃねー!!
兄さん達、笑いがとれたところでおいらは行くぜ。サイナラ。
ようやく、ここから脱出できると思った瞬間、見慣れた笑顔がコンビニに飛び込んできた。
「マッッホーーー!!!」
こっ。小姑ーーーーっっ!なぜ、お義姉様がここに??? 問題児小姑は、私にいつも通りの熱烈なハグをし(とんでもない人なのだけど、なぜか私は結構気に入られてんのよ)、それから、アゴ8に飛びついてキスしてる、キス、鱚、きすううううう??????
ま、まさか。そう、小姑の彼氏はこのアゴ8男だったのよお!
うちのへなちょこだんなに比べて全くどこまで、過激な女なんだあんたは。
もちろん私は彼氏に紹介されたんだけど、やっぱり奴はギャング団。なんか、組のでかさみたいのを熱く語っていたけど興味もないし、むしろおっそろしいのでお耳をぱたんと閉じておきましたよっ。
アゴ8に「我が妹」とか呼ばれ、しまいにゃあ「何か困ったことがあったら俺に言えよ」(おめーにだけは絶対言わんわ!!)とまるでゴッドファーザーの世界にいっちまったのでありました。
次週に続く
お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!
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