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まほの[子連れ]ハリウッドへの道46

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森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。

 リハーサルの前に響き渡る、「クワイエットプリーーーズ!」(お静かに)
普段はどんなにはしゃいで、楽しくやってても、本番で大切なのは「静寂」。ま、あたりまえですな。
 でも、私はこの「静寂」が何よりも苦手なのでございました。これは、昔っからなんだけど、もうホンットにだめ。 たとえば、法事の時に坊さんが入場するときのあの沈黙。エレベーターの中の静寂。あの、静けさがやたらおかしくておかしくて仕方がなくなって、ついくすくす笑っちまうんだよね。

 だから、現場で「クワイエットプリーズ」の声がかかると、私の中のくすくす衝動は、徐々に徐々におっきくなっていって、しまいにはプププと吹き出しそうになってしまう。外での撮影なら一人でそろりそろりと離れていって人知れずウププとなれるんだけど、それがどっかの部屋とか密封された空間の撮影だとつらい。


 私の場合、だんだんと慣れたものの始めの頃は最悪だった。ただでさえ、笑っちゃいそうな「沈黙」に加えて「うひょー私ったら、撮影ナマで見てるよー」っちゅう「浮かれ気分」まで入ってるもんだから、撮影中一人でにたにたしてることはしょっちゅう。しかも!連日のハードな撮影スケジュールでほぼ死にかけのため、ナチュラルハイときたもんだ。だから、本番になると自分をなだめて、「消えよ邪念!」とばかりに精神統一するのに必死。

 でもねえ、ハリウッドのスタッフにはいたずら好きが多くて、私のこの性質は、運悪くやつらに即刻気付かれてしまったのでありました。それからは、「マホ笑わせ」の日々……。


 私がどんなに、真剣に撮影を観察していても、後頭部になにやらプップと飛んでくるので、はっと後ろを振り向けば、頭にぶっといピクルスをのっけたきたねえ大道具のおやじが、ストロー吹き矢で、ピクルスのかけらを吹きつけてきやがる。いつもは下らんアメリカンジョークもこういう状況下では、妙におもろく感じちゃって、私のオオウケ指数は100に上っちまうわけさ。


 どんなにウププとなってしまっても、撮影の邪魔をしてはいけないので、必死にこらえて「カット!」の声をひたすら待つ私。
が、そんな、過酷(?)な我慢の日々も、意外な形でむだ骨に終わった。

 その日は、‘マフィアに半殺しにあって昏睡状態の夫を病室で妻がにくれながら見守っている’というすごくシリアスなシーンの撮影で、さすがの私もお笑い気分になどなれずかなり真剣。もちろん周りのスタッフもこの日ばかりは、いたずらどころじゃなく全員がベッドを囲むようにしゃがんでリハを見ていた。そして、高いテンションのまま、リハも終わり、ついに本番。


 監督の「アクショーン!」にも、気合いが入っている。病室のセットには、ただ、妻役の女優さんのすすり泣く声しか響いていない。緊迫した雰囲気が現場に流れる。そのときだ。

ぷう
屁が出た(不可抗力)。

そ、そんな…。

私は、ずうっと頑張ってきた。どんなに、笑わされても必死に笑いをこらえ、撮影の邪魔にならないように、ホントに頑張ってきた。なのに。なのにいいい!

 どうしても、自分の屁音をかき消したかった私はその場で、なぜか勢いよく立ち上がった。今思えば、何で何だかホント分かんないのだけど、とりあえずなにかアクションをとらずには、どうにもこうにもいられなかったのだ。
でも、それは完全な失敗で、私の後ろには、次のシーンで使う聴診器やら何やらがのった看護婦さんキットがおいてあったのだ。私のケツは、そいつをぶっ倒しちまった。
「ガッシャーン!
 私のかわいい屁ぐらいなら、マイクにはいんなかったかもしれないけれど、さすがにこのすさまじい破壊音には、ブーマ(マイクを持ってる人)もヘッドフォンをすっ飛ばした。

カーッット!(怒)」

あまりのパニックに、とっさに叫んだ言葉は
「すっすみませんっ」(日本語)
その後、私はソーリーを百万回連発し、スタッフも、役者さんも笑って許してくれたけれど、監督の目だけは笑っちゃいなかったさ…。

 

次週に続く



お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!


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