森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
今先日お話した通り、私にとっても日本米は命の次に大切なものだったわけさ。なにか悲しいことがあると、日本米を食らい、つらいことがあると、日本米を食らって、癒されてきたわけさ。
そんなある日のこと。仕事からへとへとになって帰ってきたら、ルームメイトのジェシカが、
「マホー! ライスもらってもいい?」
と聞いてきた。
ほう、珍しいじゃん。いっつもメキシカンライスのジェシカがさ。でも、いいよいいよ。もう残り結構少ないけど、食べてみそ。うまいから。
ちょっと誇らしくって、ジェシカが日本米を食べたときの顔が想像できて、にやけちゃった。だって、絶対うちらの米のほうがうまいもん。自分のおもちゃを自慢したがってるおこちゃまみたいに、浮かれた私はジェシカに快くお米を提供してあげた。
くすくす。きっと「デリシャーーーーーース!」って言って飛び込んでくるぜ。ひひひ。
部屋に戻って、一時間ほどプレステしてたんだけど、なんかジェシカが気になって集中できん。飛び込んでこないなー。出来たかなー? 食べたかなー? とキッチンのほうを見てみたらアリ? ジェシカがいない。
おーい。ジェシカー。あの人、夕飯食わずにどこ行ったんだろ? 米は? と思ってハッッッ。と気付いた。
ディグビー。私らが、みんなで飼ってた大型犬。最初はジェシカが飼ってて、連れてきたアメリカンブルドッグとボクサーのハーフ。馬鹿でかくてかわいいワンちゃん。
ディグビーが、うまそうになにかをむさぼってる。
「あああっ」
思わず声が出た。
奴が食っていたのは、私の大切な大切なお米ム!! ジェシカにあげたはずの米ム! オイッ! なんでだよ!なんでディグビーが食ってんのお??
しかも、ボール一杯! ここでまた、はっっときづいて棚を探した。ない、ない、なーーーい!! 残ってた米が全部なーい! 3合くらいのこってたのに。もはや、これで、米は終了。えいっ。どけディグビー。それは私の米やあー。ばかばかばかちんっ。
私の、頭の中はもや米一色。ジェーシーカー。ジェーシーカはどこやーー。食の恨みはこえーぞー。クソッでてこいジェシカー!
怒りで、うろうろうろうろ歩き回っていると、ジェシカがなんとタコスをくわえて登場。
きさまー! 私の怒りは頂点に達した。なんでタコスやねん! 私の大事な、日本米を犬にやって自分はタコスか! バカバカバカー!
とにもかくにも、ここは一つ文句を言わなきゃ気が済まねえ。英語でけんかをするなんて初だったけど、出来るだけの言葉を使って怒りをぶちまけた。何にも分かってないジェシカはあぜん。そして、逆切れ。ケチケチ言ってきやがった。ケ、ケ、ケチだとー! こんにゃろー。
いちお、怒ったときアメリカ人はとかくファッキンファッキン言うから、私もファッキンファッキン言いまくった。
すると、ますますジェシカが切れた。どうやら、ディグビーにまでファッキンつけちまったのが失敗らしい。そっか、ディグビーにファッキンつけたら、犬畜生って感じだ。だめだね。ソーリー。
でも、食ったほうが悪い!
ということで、また怒鳴り散らす私。すごいね。私英語でけんかしてるよ。私…楽しんでる。初めてケンカを知った殺し屋イチ〔漫画〕みたいだ。
激しいののしり合いをしてるうちに、ばかばかしくなってきた私は、なんだかおかしくなってきた。何私こんな切れてんだろ。たかが米3合で。日本帰りゃいつだって食えんじゃん。
つい、吹き出したら、ジェスもおんなじ感じだったらしくいっしょにウケてる。アホだね。うちら。ごめんよジェス。でもこれは、私が君の、大好きなベジマイト〔ジェスの故郷ニュージーのジャムみたいなやつ。クソまずい。〕全部食ったみたいなもんなんよ。そしてこの一言が、ジェシカをミョーになっとくさせた。
私の初喧嘩はこうして幕を閉じた。あ、しかも次の日ジェシカがヤオハンで米買ってきてくれて、わたいはちょびっと感動しちまったのでした。
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