森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
私と、ルームメイト二人、それから友達のステファンでドライブに行ったある夜の話。
ステファンといえば、めっちゃくちゃかっこいいモデルの男の子。ふだんかっこいい男には縁のない私は、常に鼻血ブー状態でジェシカのオープンカーの後部座席で風に吹かれながら心地よいドライブを楽しんでおりました。
すばらしきかな、こっちに来る前に、お酒を召していたステファン王子はほろ酔い気分。はっと気づけば肩に手が!!!げへへへへ おいしすぎるぜ。
コンパで酔っぱらった女の子を必要以上に介抱している男の気持ちがこのときよーく分かった。ドキドキしながらもちらっと隣をみれば、王子ー!!! ああなんて美しいお顔。よく町で見かけるでしょ? 外人の下着のモデル。奴らの肉体。顔。はんぱなしです。このまま持ってかえっちまいてえー!! がるうう。
もはや欲望の固まり、女狼に変身しつつあった、私だったが車はベニスのきったないバーに着いた。さあ、ステファンをへべれけにして、それから、、へっへっへっ。とあらぬ計画を立てていた私はるんるん気分で車を降りた。が!!!!
目の前にいたのはほんまもんの狼。手にガンを持った、おっそろしい狼だ。
そのとき、私は生まれて初めてホールドアップってやつにあった。
ブラックでまだ10代頃に見える、その彼は銃を私たちの方に向け、手を差し出していた。しかも後ろに止まっている彼のトラックには、ステレオやらテレビやらがどっさり。明らかに強盗だ。やばいやばいやばい。
足はがくがく、全身の血がどこかへいってしまったみたいな気持ちになった。 本気でちびりそうだった。映画で見た、銃のあの銃口が自分の方に向いている。今まで生きてきた中であれほど恐ろしいことはなかったんじゃないかと思う。
この間、イラクの子供がアメリカ兵に銃を突きつけられている場面を見たけど、私は、その恐怖が痛いほど分かった。私も、このとき、きっとあんな目をしていたんじゃないかと思う。
あんな小さな銃口だけど、本当に本当に怖いんだ。いやな、恐ろしい未来が私の頭の中を駆けめぐった。強盗は、なにやら怒鳴り散らしている。ジェシカはもう、泣き出していた。
下半身がまるでなくなっちゃったかのように感じた、そのときだった。なんとステファンが、すたすたと彼に向かって歩いていった。
うそでしょ?!殺されちゃうよー!
叫びたくても、恐怖のあまり声が出ない。カチャッ。という、 いやな音がして今度は、明らかに銃口がステファンに向けられた。それでも、ステファンは歩いてく。
「なあ。俺達これからのみに行くんだよ。悪いけどおまえにやるもんはないし。 もっと金持ち狙えよ。撃ちたきゃ撃っていいけど、俺だけな。ほら」
まるで映画の主人公みたいな台詞だった。
でも、それは全然かっこいいもんじゃなくて、完全に生きるのをあきらめたような、自分を殺させるためにまるで相手を挑発しているかのように聞こえた。
あぶねえよステファン。おとなしく金渡そうって。私まで、身の危険を感じて、無謀なステファンにちょっとむかついた。
強盗は、ステファンの態度に明らかに動揺して、「fuck you]と吐き捨てるようにいってどっかへいった。 さっきまでは、ステファンにラブラブだった私だし。彼のおかげで助かった。
だけど、私には、命を省みなかった彼の行動が、「勇敢」には感じられず 無性に腹が立って十文字キックでも食らわしてやりたい気分だった。
「あぶねーじゃんか ステファン!!あんた撃たれたら死んでたよ!!!」
ドラッグで頭おかしくなったのかと思っていた私が聞いた答えは、ドラッグなんて、そんなもんじゃなかった。
ステファンは一度死んでいたんだ。(次回へ続く!)
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