その街のこども 劇場版 (2010):映画短評
その街のこども 劇場版 (2010)年月を経て増す作品の強度
冒頭の”阪神・淡路大震災15年特集ドラマ”の表記にハッとさせられる。人の生活音が微かに響く夜の街を彷徨いながら、この街に置き去りにしてきた”あの日”の感情を吐露する本作のライブ感は、今現在の物語かのように私の心に響く。追悼のつどい当日にロケを行い、その空気と史実を作品に取り込んで後世に伝える野心的な制作は、のちに「あまちゃん」「LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと」を手掛けることになる井上剛監督の原点であり、多くの震災ドラマに影響を与えたことは間違いない。時としてエンタメは非常時に不要不急論が湧き出る。しかしエンタメにしか出来ないことがあることを本作が実証する。
この短評にはネタバレを含んでいます