マジック・マイク (2012):映画短評
マジック・マイク (2012)ライター2人の平均評価: 5
男性ストリッパーの葛藤に切なさ全開の青春ドラマ
チャニング・テイタムのストリッパー時代の実話に着想を得た本企画。イケメンたちによるショーの場面は、ド派手で見応えがあり大興奮の連続! チャニングのダンスの切れ味は素晴らしく、共演のマット・ボマーやジョー・マンガニエロといった美形&肉体美を誇るスターの個性と魅力も見逃せない。
だが、映画のエッセンスはマイクが実業家としての成功を夢見ながら、人生に葛藤する等身大の青春ドラマにある。クラブではスターでも、現実社会でのトホホ感は拭えない。ステージで女性達が熱狂しながらパンツにねじ込んだ紙幣を、家に持ち帰り一枚一枚、机の角で丁寧にしわをのばしながら事業資金として箱にしまう姿は、あまりにも切なく胸しめつけられる。
一方で、新人くんやマイクとの対比としてクラブ経営者の存在が効いている。演じるマシュー・マコノヒーの、この世界で生きていくことを決意した男の業をも感じさせつつ、誰よりもギラギラとした凄みは圧巻! ラストのステージは彼の独壇場だ。
刺激的な題材の魅力を存分に描きつつ、青春映画として誰もが共感できるビタースウィートな感動を見事に伝えてみせる。ソダーバーグの巧みな仕事ぶりに脱帽の一作だ。
誰か“マコナヘー“の暴走を止めたって!
かつてはペネロペ・クルスとも交際し、一応二、枚目俳優路線を歩んでいたはずマシュー・マコナヒー(※映画誌「スクリーン」ではマコナへーと表記)の暴走が止まらない。『バーニー みんなが愛した殺人者』(公開中)ではテンガロンハットをかぶった胡散臭い地方検事。『ペーパーボーイ 真夏の引力』(同)では性癖をお持ちの記者。そして本作では男性ストリップクラブのオーナーで、今をときめくマッチョ俳優チャニング・テイタムに負けじと、桃尻丸出しでダンスも披露だ。
思えば彼の凋落は、夜中にハッパを吸ってハイになり、ボンゴを叩いて逮捕された`99年頃に始まるのだが、劇中ではそのボンゴ事件をも彷彿とさせる自虐シーンも再現する。
そもそも本作も、若きテイタムのストリッパー体験が素になっている。生き馬の目を抜くハリウッドで戦う男たちの強かさと開き直りがギュッと凝縮された1本であり、ハリウッドでやり尽くしたS・ソダーバーグ監督の映画監督引退記念に相応しい打ち上げ花火である。