子宮に沈める (2013):映画短評
子宮に沈める (2013)大阪二児遺棄事件を検証して見えたもの
世間に衝撃を与えた大阪二児遺棄事件をもとにした社会派ドラマだ。物陰から親子の生活を覗き見するかのように撮られた映像は、あたかもドキュメンタリーのようだが、すべてが事実に即しているワケではない。資料から察するに、母親が育児放棄するに至った内情や孤独を追究したかったようだ。しかしその点は、杉山春さんによる「ルポ虐待ー大阪二児置き去り死事件」(筑摩書房)刊行後だけに、尚更、物足りなさを感じる。だが、部屋に何日も取り残された3歳女児と1歳9ヶ月の男児がどれだけか弱き存在なのかを生々しく映像で見せられ、胸が張り裂けそうな思いだ。
特に、身近に子供のいない人にはハッとさせられるシーンの連続だろう。3歳児が冷蔵庫に残ってたマヨネーズで腹を満たそうとするのだが、手で蓋を開ける力がなく歯で開けることを。弟の面倒を看たくても彼女には重すぎて、動かすのすら一苦労であることを。もちろん母親がいない不安や寂しさは計り知れない。当の母親は、こうした子供の心情や行動を想像しただろうか。
悲劇を繰り返さないためにも私たちに何が出来るのか? 問題提起する上でも本作が製作された意義は大きいだろう。