南京!南京! (2009):映画短評
南京!南京! (2009)戦争の悲惨さを徹底的に描き出した力作
映画『ココシリ』(04)で中国・チベット高原の厳しい生活を、圧倒的な映像で表現した中国の陸川監督。黒澤明ばりの妥協なき撮影は本作でも健在。戦闘シーンの壮絶さ、人間の残獄さ、集団の狂気などを映像で徹底的に見せていく。悲劇を繰り返してはならないとする陸川監督の強いメッセージを感じることだろう。
南京事件を巡っては、犠牲者数など日中間での認識の違いなどが論点となり、加害者・被害者含め当事者たちの心情は忘れられがれがちだ。日中の体験者を調査して製作された本作には、公的文書には決して記載されることのない憎悪や無念さといった心を掬い取るのが映画の役割なのだということを、改めて気づかせてくれるだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます