郷愁鉄路~台湾、こころの旅~ (2023):映画短評
郷愁鉄路~台湾、こころの旅~ (2023)鉄道から紐解く知られざる台湾史
台湾南部の壮大な自然の中を走る南廻線の気動車を、時に運転席から、時に上空から、愛でるように撮影した映像だけでも一見の価値がある。だが監督は、鉄道オタクではないという。ではなぜ愛溢るる絵が撮れたのか? ひとえに監督の、先人たちへのリスペクトがそうさせるに違いない。監督はこれまでも多方面から台湾史を掘り下げてきたが、本作もその一環だ。他国の支援を受けず台湾だけで開設した路線で、建設には台湾原住民が駆り出されたこと、さらには連続爆破事件勃発など、台湾近代化に犠牲と献身を尽くした名もなき人たちに光を当てる。本作は台湾初の鉄道ドキュメンタリーだという。記録することの意義を実感するだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます