黒い雨で被爆……原発事故の悲劇がリアルすぎるラブストーリー日本で公開
チェルノブイリ原発事故から20年経ったいまも、被災者は体の苦しみだけでなくさまざまな苦悩と闘い続けている。そんな原発事故の後、被爆してしまったティーン・エイジャーを軸に被爆者たちの悲劇と再生を描いた『みえない雲』が12月30日に公開される。日本でも井伏鱒二が原爆が落ちた後に降った雨を「黒い雨」と表現しているが、まさにその放射能の雨が主人公を襲う。
物語は一見普通の青春ドラマ風に始まり、悲劇とは無縁に見える。しかし、物語中盤、原発事故が発生し、人々が見えない放射能から、行き場のない逃亡を始めるあたりから物語は原発事故の恐ろしさを嫌というほど見せつけてくる。
本作の主人公を演じたドイツの女優、パウラ・カレンベルクも一見普通のティーンエイジャーだが、彼女もチェルノブイリ原発事故の影響を強く受けたドイツで生まれた。彼女が生まれたのは、事故と同じ年。一見、五体満足に見えた彼女の体には肺が一つなかったのだ。
そんな彼女の演じる主人公の絶望はダイレクトに観客の心に伝わってくる。映画を見終わった後、感じるのは「被災してしまった人に自分が何かできることはないのか?」そんな人たちのために、劇場のロビーには「チェルノブイリ子ども基金」の募金箱が置いてある。
「チェルノブイリ子ども基金」はフォト・ジャーナリストの広河隆一が、チェルノブイリを取材中に、子どもたちを救援したいという気持ちから募金運動を始めたのがきっかけで設立された。この広河隆一「チェルノブイリ20年の刻印」の写真展も劇場で開催されている。
『みえない雲』は12月30日より、シネカノン有楽町にて公開。
オフィシャルサイトmienaikumo.jp