アンソニー・ホプキンスを直撃!「引退はしょっちゅう考えている…」
オスカーをはじめとした数々の演技賞に輝くイギリスの名優アンソニー・ホプキンスと、モーション・キャプチャーでとらえた俳優たちの演技を基にしたコンピューター・アニメーション作品というのは、何だかすんなりと結びつき難い。しかし、意外なことに映画『ベオウルフ/呪われし勇者』への出演依頼を受けた時のホプキンスの反応は実にポジティブなものだったという。そんなホプキンスに話を聞いた。
「監督がロバート・ゼメキスということでOKしたんだ。彼は優秀な監督だと思う。彼の作品は沢山観たよ。『フォレスト・ガンプ』とか『コンタクト』とか。わたしは俳優だからね。興味深い監督から話があれば出たくなるさ。出演を決めるのに哲学的な理由なんか無い。楽しめそうな仕事だと思えば出るだけだ」 「ベオウルフ」に登場するフロースガール王はホプキンスにそっくりではあるが、ホプキンスはカメラの前で演技することは全く無かったと言う。
「まずは、マントなどの衣装を着て、付けひげとかを付けて、剣を持った姿で、何時間もかけてコンピューター化された写真をたくさん撮られた。でも、衣装や小道具を見たのはそれが最後だった。それから後は、体中に点みたいなものを無数に付けられた状態で演技した。演技する場所の背後の壁には、自分たちが演じているシーンの背景を描き出した大きな絵が飾ってあって、最終的にはどのような映像になるかは判るようになっていたんだが、演技をしていて基準点になるようなものが無かったから、ちょっと勝手が違ったね。でも、逆に、リアルに演じようとするときに妨げになるようなものがなくて、かえって自由に演技ができたのではないかと思う」
今年の12月には70歳になるホプキンス。映画デビューをする前の舞台に立っていたころから数えると、俳優業も40年を超える大ベテランだけに、仕事に対するスタンスもほとんど“悟り”の境地に入っているような印象を受ける。
「仕事については、あまり深く考えることは無い。入ってくる仕事をただこなすだけだよ。計画を立てたりすることも無いし。『ベオウルフ』のような娯楽大作に出ることになったというのも、かなり意外なことだった。でも、この仕事は長い間しているからね。今でも脚本だけはじっくり読んで台詞もキチンと憶えるけれど、あとは撮影現場に来て、頼まれた仕事、すなわち演技をこなすだけだ」ホプキンスは実は多才な人で、絵も描くし、ピアノも弾く。70歳にもなることだし、引退という言葉が頭に浮かぶこともあったりするのだろうか。
「ある、ある。そんなのしょっちゅうだ。常に考えていると言っても良いかもしれない。(笑)ピアノを弾いたり、作曲したり、絵を描くのは、私にとっての人生の楽しみだ。でもねえ、そんなことを考えていても、仕事の話が来るとつい引き受けてしまう。この間も『仕事したい?』という電話があったので、『うん、いいけど何?』と言ったら『ウルフマンなんだけど、どう?』と言われたので、『OK。で、どこで撮影?』『ロンドンのパインウッド・スタジオだよ』『ああ、OKだよ』なんて、こんな調子さ」 この自然体が、40年間、高いクオリティの仕事をし続けていく秘訣なのかもしれない。
映画『ベオウルフ/呪われし勇者』は全国にて公開中
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