アカデミー賞ノミネート作品『闇』を製作中、政府から盗聴されていた?…監督激白
第80回アカデミー賞
映画『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』で大企業の不正にメスを入れ、モラルの欠乏した経営陣を世間に暴いたアレックス・ギブニー監督が、今回は米軍刑務所で虐待された捕虜たちに焦点を当て、そのすさんだ実態から生まれる拷問と無期限の拘留などをあからさまにした映画『闇』を製作した。第80回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた本作について話を聞いた。
ストーリーは、アフガニスタン・カーブル近郊のバグラム空軍基地に存在する秘密拘禁施設で、罪のないタクシー・ドライバーが殴り殺された事件を中心に、拘留されていた捕虜、虐待した兵士、刑務所の護衛官、政府の高官、新聞記者などにインタビューを試み、無知と傲慢さから生じたアブグレイブ刑務所やグァンタナモ刑務所の虐待を浮き彫りにしていく。
製作のきっかけについてギブニー監督は「亡くなった父が第二次大戦中に目が悪くて海軍に入れず、空軍の言語学校に送り込まれた。そこで日本語を学び、後に厳しい戦火にある真珠湾と沖縄で、日本軍捕虜の尋問をしていたんだ。その彼が大戦を振り返った際に、現在の兵士が行っている拷問は、彼の時代では、思いもよらないような行為だと、わたしに怒った口調で言ったんだ」と話してくれた。
あらゆるアングルをカバーしたこの映画の構成の難しさについては「エンロンを撮っている時を思い出したよ(笑)。複雑な構成だけど、ダクシー・ドライバーの事件が呼び起こした波紋の経過をつないでいくことを試みた。それは、このドライバーを尋問した兵士が、後にアブグレイブ刑務所に行ってストーリーをつなげていくようにだ。ただ編集には苦労したよ。自分たちが撮った映像が十分であるか判断するのには時間がかかり、常に再編集を繰り返していた」と述べた。
政府の高官からは批判されるであろう映画のため、彼は撮影中に盗聴されているかもしれないと思っていたらしい。この映画は現在、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされている。