父親はブラザー・トム!自力でカンヌへの道を得た小柳友19歳!
第61回カンヌ国際映画祭
第61回カンヌ国際映画祭にて、先ごろ行われた公式上映でスタンディングオベーションを得た映画『トウキョウソナタ』の小柳友が、現地で単独インタビューに応じた。同作品にオーディションで選ばれた小柳は、黒沢清監督が「彼には華がある。他の映画で目立つ前に使っておこうと思った」と語る逸材だ。だが小柳はすでに映画『ヒートアイランド』『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』『シャカリキ!』(9月公開)など出演作多数の売れっ子だ。【関連作品の写真はこちら】
小柳は「でも事務所の力とか関係なく、『トウキョウソナタ』はオーディションで受かった役。しかもこうしてカンヌにまで来られて、僕の中ではかなりの自信につながりました。ただ兄も同じ役でオーディションを受けていたので、僕の方に決まって気まずかったんですけど」と苦笑いする。
小柳は東京出身の19歳。ブラザー・トムを父に、ドラマ「ごくせん」に出演中の小柳心を兄に持ち、187センチの長身に米国人の血をひく端正な顔立ちでルックスは申し分なし。しかしドラマ「木更津キャッツアイ」シリーズに触発されて芸能界入りしたものの、いきなり洗礼を受けたという。小柳が説明する。「ある映画のオーディションに落ちたんです。『君は演技が出来てないね』と。甘かったんです。『たぶん受かるだろう』とヘンな自信があったわりには、役に対して何も考えずにオーディションを受けてしまった。この経験が、良い勉強になりました」。
そして『トウキョウソナタ』で得たのは、香川照之と小泉今日子演じる夫婦の長男・貴役という大役だ。同作品は、不協和音を奏でていた家族が、再生に向かっていくまでをシニカルな笑いを交えながら描いた、黒沢版ホームドラマ。小柳は今までコミカルな役どころが多かったが、本作では等身大の大学生役だ。何を考えているか分からないような貴だったが、米国政府が米国籍以外の者も軍への入隊を受け入れる法案が出来たことを知り、日本からの入隊者第1期生に勝手に応募し、家族に波風を立てる。小柳は、その入隊シーンを演じるために、ロングヘアをカットして五分刈りにした。小柳は「髪を切ることに抵抗はなかったです」と言う。続いて、「香川さんからは『役者は、伸ばせるところはどこでも伸ばせておいた方が良いよ。役に合わせて切るのは簡単だけど、伸ばすのは時間がかかるから』とアドバイスを受けました」という。
その香川とは劇中、米軍入隊を巡りド迫力の親子ゲンカを演じた。小柳が撮影秘話を明かす。「打合せではなかったのに、本番で香川さんがいきなりバッグを僕に投げつけてきたんですよ。その時はさすがに『てめぇ、このヤロー!』と心の中で本当に思いましたよ(笑)。でも香川さんにはそうやって引っ張って頂いて感謝しています。香川さんと小泉さんと芝居をして、本当に演技って楽しいなと思えた現場でした」。
ただし、本作品における自身の評価は30点と手厳しい。「今までの作品は2点ぐらい(苦笑)。自分では『もっと出来るんじゃないか』という思いがいつも残るんです。せめて80点と評価出来るようになるまで頑張らないと」と表情を引き締める。そんな小柳の演技について、黒沢監督は次のように評する。「ストレートな芝居であるが故の気持ち良さと怖さの両方を持っていて、それがとても良かった。怖さと言ったら語弊があるかもしれないけど、凄みとでも言うのかな。何より撮っていてアップに耐えるし、まな差しが本当に良かった。確かにもう売れっ子なってきてますけど、僕が先に発見したんだと自慢したいです(笑)」。黒沢監督といえば、映画『アカルイミライ』でオダギリジョーをいち早く主演の抜てきした先見の明アリ。オダギリに続くスターとなるのか!? 今後に期待したい。(取材・文:中山治美)
映画『トウキョウソナタ』は2008年秋、全国公開
オフィシャルサイト tokyosonata.com
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