3度目のパルム・ドールなるか!賞の常連兄弟また自宅に帰る?
第61回カンヌ国際映画祭
第61回カンヌ国際映画祭にて現地時間22日、コンペティション部門出品作『ロルナの沈黙』(原題)のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が日本人記者向けの会見を行った。
『ロゼッタ』では低賃金所得者を、『息子のまなざし』では少年犯罪、『ある子供』では幼児売買を描いていたが、今回のテーマなったのは偽装結婚。
アルバニア人女性ロルナはベルギー国籍を得るために麻薬中毒者と結婚し、いつか母国にいる恋人を呼び寄せて一緒に飲食店を経営すること夢見ていた。しかし仲介業者のマフィアに良いメシの種とされ、辛い現実を見る事になる社会派ドラマだ。しかしジャン=ピエールは「作品の中心は偽装結婚ではありません。私たちが関心あるのは、自分の夢を叶えるために、犠牲を払うことになったある人間のジレンマです。私たちの映画は、常に社会から疎外された人たちを主人公にしていますが、その彼らがどう生き延び、何を選択して生きていくのか。その人物を通して、社会や世界はどう回っているのかを見ているのです」と語る。
タイトルにもなっているロルナを演じるのは、コソボ出身の女優アルタ・ドブロシ。コソボとマケドニア、アルバニアでオーディションを行い、100人の中から選んだ精鋭だ。ボスニアのサラエボでテストシューティングを行ってから正式決定した。ただし、撮影に当たり、彼女に条件を出したという。リュックいわく「1年間、ベルギーで暮らした移民ぐらいのレベルの仏語を身につけてもらうこと。撮影地のリエージュで暮らしてもらうこと。そして『髪を切って欲しい』ともお願いしました。彼女は子供の頃からロングヘアだったので最初はイヤがっていたのですが、ショートヘアの方が彼女の優しい眼差しが美しく写ると思ったんです」と言う。
そんな監督たちには、『ロゼッタ』『ある子供』に続いて、本作品で3度目のパルム・ドール受賞の期待がかかるが、リュックは「プレッシャーは特にありません。私たちにとっては、映画祭にこうして選んでもらい、批評家に評価してもらうことの方が大事。ここでの評価は、公開につなげていくことができますから」と淡々と語る。前回同様、受賞結果を待たずに、ベルギーの自宅へ戻るという。
「毎日、非常にたくさんのジャーナリストと会い、悪い意味じゃなく、気持ちの良い疲れがあるもので。自宅で少し休みたい」とジャン=ピエールが語る横で、リュックは大きなあくびを一つ。25日の授賞式には再び、カンヌに戻ってくることができるか!? そんな記者たちの期待をよそに、二人は「アリガトゴザイマシタ」と日本語であいさつをしながら去って行った。(取材・文:中山治美)
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