オダギリジョー主演『たみおのしあわせ』がワールドプレミア!監督に独占インタビュー!
10年目を迎えたニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルのオープニング作品に選ばれた映画『たみおのしあわせ』の岩松了監督にニューヨークで話を聞いた。監督、脚本家、役者、舞台監督とさまざまな顔を持つ岩松監督。今回がワールド・プレミアとなる本作について、意気込みを語ってもらった。
‐この作品がワールド・プレミアに選考されていかがですか?
(岩松了監督)僕自身があまり事態を理解してないんです(笑)。でもニューヨークでできるなんて光栄ですね。オープニングだから注目されるでしょうし、これからゆっくり宣伝していきたいですね。
‐オダギリジョーさんと麻生久美子さんのキャステイングの経緯を教えてください。
(岩松了監督)脚本では父親と息子が中心になる構成なので、最初にオダギリさんと原田芳雄さんに依頼して、すぐOKの返事をもらったんです。だけどいったん2人が決まった段階で企画がだめになってしまったんですね。しばらくして今の配給会社さんが拾ってくれたんですが、その間に僕は俳優として、オダギリさんと麻生さんとテレビドラマ「時効警察」で共演したんです。それで知り合いになっていたので声が掛けやすくなったんです。このドラマのイメージが観客には強いだろうし、製作中は不安だったんですが、良い意味でそのイメージを覆せたかなと思っています。
‐映画内で結婚に至るまでの幸せを追求していますが、岩松監督自身の幸せの定義とは何ですか?
(岩松了監督)ちっとシニカルな言い方になると思いますが、人が幸せを感じるときは、適度に人が愚かである状態にあると思うんです。すごく賢いときは、世の中の矛盾とかいろいろ考えるだろうし、あまり幸せを感じないと思うんです。個人的にハッピーな状態を自分で満喫できるのは、利口な度合いが少ないときだと思います。自分がバカであると認識しないまでも、そういう状態であるということが人間にとって幸せな状態だと思うんです。
‐映画の選曲については?
(岩松了監督)“勝手にしやがれ”というバンドがありまして、僕は彼らの曲に惹(ひ)かれていたんですが、最初は彼らの音楽が僕の映画に合うかは、あまり自信がなかったんです。ただ、僕が僕自身の世界をこうだと決めてから、彼らに頼むことによって、彼らは僕が考えている以上の場所に僕を引っ張ってくれるだろうと、何となく感じていたんですね。そして彼らの音楽を自分の映画にぶつけることによって、僕が把握できないほどの広がりを音楽によって表してくれると思ったんです。今は彼らに頼んで良かったと思っています。
‐ラストシーンは、映画『卒業』『フィールド・オブ・ドリームス』を想像させるのですが、意図的に演出されたものなのですか?
(岩松了監督)僕は、『フィールド・オブ・ドリームス』のことは全然意識してなかったんですけれど、後で人に言われて「そういえばそうかなぁ」という感じでした。『卒業』は明らかにそれを意識してやっています。『卒業』に関しては、僕が若いころに田舎で暮らしていたときに、都会ではやっていた映画が『卒業』だったんです。都会の人たちと一緒にならなければと思って観た最初の映画だったので、記憶に焼きついているんですよ。
2日というわずかな滞在だけでは大した観光ができないと残念がっていたが、オープニング作品として公開された『たみおのしあわせ』は大盛況となり、岩松監督は満足した様子だった。(取材・文:細木信宏)
映画『たみおのしあわせ』は7月19日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国公開