原田眞人監督、ジャーナリズムを目指す学生へ厳しい注文
28日、GAGA試写室にて映画『クライマーズ・ハイ』試写会とトークセッションが行なわれ、原田眞人監督が作品について、ジャーナリズムのあり方について大いに語った。
ソーシャルネットワーキングサービスMixiから生まれた、地方紙記者を中心にしたコミュニティー、ローカル・メディア・ネットワーク(LMN)主催で行なわれたこの日のトークセッション。映画で描かれる群馬県御巣鷹山での航空機事故について「1985年8月12日、あのとき、メディアは何を伝えたのか?」をテーマに原田監督をはじめ、地方紙記者やジャーナリストを志す学生らが集まり、約3時間に渡って熱い議論が交わされた。
映画にもっと何気ない日常や女性たち母親の姿などを出してほしかったという学生からの意見に対して原田監督は「見えてこないから描かれていないというわけではない。実は母親像はものすごく重要な意味をもっている。モナリザの音楽を使ったのも母親のイメージの音楽だから。また、悠木(堤真一)の特ダネを打ちたい、でも特ダネを打つと母親との一番大切にしている思い出を壊してしまう、という彼の心の奥にある一番アンビバレンツなところにいるのが母親だ」と答えた。また悠木が谷川岳衝立岩に登攀する意味について、「最後のハーケルの位置はとても重要。あれは子どもから父親へのメッセージであり山の頂点に立つことは、父性の象徴の頂点に立つということ」と一つ一つのシーンに込めた思いを語った。
「実はこれは今まで言わなかったことだけれど……主人公の悠木は映画監督である自分そのものでもある」と原田監督。「わたしが原作に一番共鳴したのは、何かを伝えたいと思っている連中が、己の信念をもってみんなでぶつかりあっているところ。こういう熱さ、それを今の若い人たちは、熱いというだけで避けてしまうところがあって、そういう若者へ向けて、働く現場でとにかく愚直に働くことが大事だと。そしてそういう人間をいっぱい作っていって、“人間を語る”ジャーナリズムを目指してほしい」と学生たちに熱いメッセージを送っていた。
『クライマーズ・ハイ』は作家・横山秀夫の同名ベストセラー小説の映画化。世界最大で最悪の単独航空機事故を取材した記者たちの壮絶な1週間を圧倒的な迫力で描く。
映画『クライマーズ・ハイ』は7月5日より全国公開