新進気鋭のアジア系アメリカ人女流監督が描く家族の崩壊とは?
第21回東京国際映画祭
23日、第21回東京国際映画祭が開催中の六本木ヒルズのTIFFムービーカフェでコンペティション部門の映画『ハーフ・ライフ』の記者会見が行われ、ジェニファー・パング監督、プロデューサーのルーベン・リムとアラン・T・チャン、製作総指揮のマーク・E・リーの4人が登場した。
女流監督のジェニファー監督を含め、登壇した4人はすべてアジア系アメリカ人。それぞれが来日を喜び、日本の印象について語った後、アメリカでのアジア人の映画作りへの質問が続いた。「アジア系アメリカ人たちの制作集団が、ロサンゼルスやサンフランシスコにいくつかあって活動しています。わたしは、いくつかの短編をアジア系アメリカ人の開催する映画祭に出品した経験があります」とジェニファー監督。プロデューサーのルーベンは「この作品の脚本は僕とジェニファーが共同で書いているけれど、意欲的な内容になっている。ジェニファーは、とても情熱的で明確なビジョンを持った人なんだ。ほかにもいいメンバーたちと組むことができてラッキーだよ」と語った。それぞれの家族や友人の紹介で知り合ったという4人だが、お互いが映画作りへの情熱を持ち、しっかりとサポートし合っているという強い結びつきを感じた。
父親が出て行き、若さへのこだわりを捨て切れない母親とその若い彼氏、そして19歳の姉パムと暮らす幼いティモシー。そのちょっと変わった家庭環境が段々と崩壊し、ティモシーはストレスに追いやられていく……。カリフォルニア州ロサンゼルス郊外に住む姉弟を中心に展開する屈折した人間模様を描いた本作は、女性監督の独自の視点で繊細(せんさい)に映画化された。どこまでが夢で、どこまでが現実なのか、不思議な空気感が漂う中、アメリカに住む混血の家族たちの閉塞感をしっかりと描きだす。キャスティングへのこだわりは「一緒にいて家族に見えるということがチャレンジだった。混血の家族は、家族の近未来像として提示したかった」とジェニファー監督は語った。
心象風景に日常がリンクしているので、観る人を選ぶ映画かもしれない。しかし、映画『スキャナー・ダークリー』風なアニメーションを挿入してドラマにエッジを加えるなど独特なセンスにあふれた映画でもある。