ロッテルダム国際映画祭で満員御礼の好評ぶり!ミュージシャン大友良英のドキュメンタリー
ミュージシャン大友良英を追ったドキュメンタリー映画『KIKOE』(初夏公開)が、第38回ロッテルダム国際映画祭の「スペクトル」部門で招待上映された。同作品を手掛けたのは、東京芸大大学院美術研究科出身の岩井主税(いわい・ちから)監督。大友氏へのファン熱が高じて、2005年1月から約3年間密着し、自費でロンドンやニューヨークまで撮影に出掛けた。「途中で制作資金がなくなり、どうしよう? と考えた結果、大学院に入り、奨学金を有効活用させていただきました。今だから言えることなのですが(苦笑)」と振り返った。
大友氏は作曲家としても知られており、中国のティエン・チュアンチュアン監督の映画『青い凧』、田口トモロヲ監督の映画『アイデン&ティティ』、新作映画『色即ぜねれいしょん』など数多くの映画音楽を手掛けている。また、ノイズや即興演奏で、音響の発生を焦点にした作品やライブも行っている。
本作は、そんな大友氏の活動や、ミュージシャンのジム・オルークや菊地成孔、DJ Spookyから、舞踏家の田中泯、そしてチェコ映画界の鬼才ヤン・シュヴァンクマイエルなど大友氏と交流のある、幅広い友人たちへのインタビューを通して、音楽とは何か? 音とは何か? を突き詰めていく。半生を追う普通の人物ドキュメンタリーとは一味違う、岩井監督による、音楽への誘いだ。
「ドキュメンタリーは正確なモノ、信ぴょう性のあるモノとして認識されてますが、結果的には作り手によって構築されるもの。なのでこれは大友さんのドキュメンタリーだけど、僕の視点で描いた、僕の作品だと思ってます。菊地さんたちにもあえて大友さんに関する質問はせず、音楽家の映画とは何か? などを尋ねています。大友さんと関係のある人たちがどんな人物なのかを見せることで、大友さんのパーソナリティーを引き出せたらと思いました」と話す。
上映は若者を中心に満席となり、早速イギリスのドキュメンタリー映画祭などから声をかけられたという。初の映画祭出席で刺激を受けた岩井監督は「僕は今までドキュメンタリーや、美術の世界で活動を行ってきたのですが、今後は映画監督としてフィクションにもチャレンジしたい」と目を輝かせていた。 (取材・文:中山治美)