巨匠イーストウッドが引き出した、アンジー女優人生最高の演技の秘密とは……!?
クリント・イーストウッドが監督を務める新作映画『チェンジリング』で、アンジェリーナ・ジョリーがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ話題となっているが、これまでも自身の監督作から数多くのアカデミー賞受賞者を輩出してきたイーストウッド監督の演出の秘密は、一体どこにあるのか探ってみた。
本作は、1928年にロサンゼルスで実際に起きた悲劇の実話で、アンジーは最愛の息子のために腐敗した警察と戦う母親の姿を鬼気迫る演技で熱演。イングリット・バーグマンなどの、ハリウッドのクラシック映画をほうふつとさせる演技を見事にアンジーに表現させたイーストウッド監督は、俳優の才能を引き出すことに定評がある。
映画『ミリオンダラー・ベイビー』では、たった37日間という短い撮影期間にもかかわらず、主演のヒラリー・スワンクがアカデミー賞主演女優賞を受賞するほどの最高の演技を引き出してみせた。そのほかにも、モーガン・フリーマン、ティム・ロビンス、ショーン・ペンなど多くの俳優たちをアカデミー賞に導いてきた。
来日会見時に、アンジーはイーストウッド監督を「現場のスタッフ全員から敬愛される尊敬すべきリーダー」と絶賛した。現場では俳優のみならず、スタッフ全員がイーストウッド監督のために一生懸命働くのだそうだ。
最高の演技を引き出す秘密は、彼の人柄だけではない。リハーサルから本番まで何度もテークを重ねていくのが普通の撮影法だが、イーストウッド監督は“本番1テーク”が基本。イーストウッド監督の現場に初めて参加したアンジーも、当初はその撮影法に戸惑ったそうだが、それにより「適度な緊張感を保ち、ベストを尽くせた」と語っている。たった一度だけ与えるテークで、役者が自分の持ちうる最高の演技を最高のモチベーションで発揮しようとすることこそが、イーストウッド監督の特徴的な演出法といえるだろう。
特にアンジーにとっては、息子が行方不明となり極限状態の母親が感情を爆発させるシーンが多く、同じ演技を重ねる必要がないというのは、演じる側としても助けになったようだ。
しかし、一発で演技をキメるというのは、かなりレベルの高い演技力が必要とされるはずだ。才能ある役者から、最高の演技を引き出してみせる天才イーストウッド監督の演出で、女優人生最高の演技と海外メディアからの評判も高いアンジーは、今年のアカデミー賞大本命といわれている。
巨匠と呼ばれるイーストウッド監督と、名女優アンジーが作り出した最高の化学反応に期待したい。
映画『チェンジリング』は2月20日よりTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開