監督はリアル派遣労働者!希望のないラストシーンに観客から突っ込み!
不安定な派遣労働で日々をつなぐ、若年ワーキング・プアの生の実生活を映し出したドキュメンタリー映画『遭難フリーター』が初日を迎え、監督・主演の岩淵弘樹と、プロデューサーの土屋豊が舞台あいさつを行った。
まさに今の日本社会が抱える問題の当事者として、自身の派遣労働者生活をビデオに収めた岩淵監督。実は大学では映像製作を学んでいたそうだが、「留年を入れた4年半の大学時代よりも、土屋さんと構成を練っていた2か月の方が断然勉強になったので、あの大学生活はなんだったんだろう……って思います」と笑う。そんな岩淵監督の姿を見守ってきた土屋プロデューサーは、「撮影中は、彼は自分がどういう状況に置かれていて、何を撮影しているのかわかっていなかったと思うけれど、公開が決まって客観的に自分を見る必要が出てきたり、自分の作品を説明する必要が出てきて、今やっと、自分のいた状況と社会とのつながりを語れるようになってきたようです」と映画監督としての成長ぶりを語った。
そんな岩淵監督がこだわったのは、ラストシーン。「今日観てくれたお客さんの中には、きっとポカ~ンとなった人もいると思います。でも自分としては、この映画を少しでも希望を見せる作品にしたいというのがあったので……」と語ると、会場前列からボソリと「あれは希望じゃないよ!」と突っ込みが。そんな声に「見方は(観客に)委ねているので、僕の気持ちとずれていてもいいです……グサっと来たけど……」と岩淵監督。雇用状況が悪化する現代日本で、岩淵監督のリアルな派遣労働者生活はさまざまな感情を呼び起こしそうだ。
『遭難フリーター』は、不安定な派遣労働で日々をつなぐフリーター・岩淵が、「遭難しそうな日常」を疾走する姿を描くドキュメンタリー。
映画『遭難フリーター』は3月28日よりユーロスペースほかにて全国公開中