『スラムドッグ$ミリオネア』で突然スターになった主役の二人を直撃インタビュー!
無名のインド人俳優が主演したインディペンデント映画にもかかわらず、アカデミー賞で作品賞をはじめとする8部門を獲得した映画『スラムドッグ$ミリオネア』で、主演作の大成功で、突然スターになってしまった主役のデヴ・パテルとフリーダ・ピントに話を聞いた。
『スラムドッグ$ミリオネア』はスラム街で育ち、生き別れになった男女が、さまざまな困難を乗り越えて再会するというラブストーリーである。全世界で3億ドル(約300億円)近いヒットを飛ばしている本作の一番の魅力は、まだ初々しさの残る主役の二人、デヴ・パテルとフリーダ・ピントにあるといえよう。
デヴは、本作で映画デビューを果たしたのだが、主人公のジャマール役を射止める前は、イギリスのテレビシリーズ「スキンズ」(原題)に2年間出演していたそうだ。
「僕は小さなころから、いつも人々を楽しませたいと思っていたんだ。学校でもいつもクラスのジョーカー役で、何かのモノマネをしたりして、みんなを笑わせていたよ。それで、ドラマの先生が僕のことを学校の舞台に出したんだ。シェイクスピアの「十二夜」に出て、ベストアクターの賞とかもらっちゃって……。『これをずっとやっていきたい!』って思ったんだ」
一方、ラティカ役のフリーダも、映画に出演するのは本作が初めてだと言う。
「子どものころからずっと演技をしたいと思ってたの。7歳のとき、鏡の前で賞を受け取るマネとかしてたわ(笑)。舞台をいろいろやって、大学でもちょっと変わった役とかやっていたの。みんなわたしの演技を褒めてくれたけど、インドで映画の世界に入り込むのは本当に大変なの。スターの子どもたちが映画界に入ってくるんだけど、何のコネもないニューフェイスにはとても大変! それでモデルをしたり、旅番組をやったりしていたの。その番組で日本へも行くはずだったんだけど、ほかの人がやったところだったから、残念ながらわたしは行けなかったの」
フリーダはムンバイ出身なのだが、「だからこそこの映画は、わたしにとってとてもスペシャルなの。あの町のことはすごくよく知っているから。ムンバイのさまざまな面をこの映画はとらえているのよ」と言う。
スラム街の子どもたちの過酷な生活が描かれているが、そこにはどれくらいリアリティーがあるのだろうか。
「小さなラティカやジャーマルは、本物のスラム街出身なの。だからあれはリアルなんだけど、この映画が描いているのは彼らがハッピーなところだと思う。食べ物もあるし、テレビもあるし、みんな携帯電話を持っているし。今はもうそんなにひどくないわ。彼らはハッピー・ピープルなのよ」
フリーダは、6か月にわたるオーディションを経て、やっと出演が決まったそうで、ひと月に2回もオーディションに呼び出されたこともあったそうだ。
「そのたびに、ダニー(・ボイル監督)がラティカというキャラクターについて説明してくれたから、最後には『わたしがラティカよ』って言えるくらい彼女について何でもわかるようになったのよ」
ちなみに、演じていて難しかったシーンについて聞くと、デヴは「クイズ$ミリオネア」のシーンと、警察署で拷問されるシーン、そしてキッチンのシーンを挙げた。
「スタジオと警察署のシーンはとても似ていたよ。何かを質問されるたびに、昔の僕の思い出につながるんだ。母親が殺された日を思い出したりね。とてもタフだったよ。キッチンでラティカに会うシーンもすごく緊張した。この少年は、彼女のことを探し続け、インド中を渡り歩いてきたんだ。わらの中で一本の針を見つけるみたいに、1,400万人が住む町でついに彼女を見つけたんだよ。あのシーンの『アイ・ラブ・ユー』を心の底から言えるように、ダニー監督に何度も何度もやり直しさせられたよ」
今後、デヴはM・ナイト・シャマランの新作映画『ザ・ラスト・エアーベンダー』(原題)に出演。フリーダは、ウディ・アレン監督の新作(タイトル未定)と、ジュリアン・シュナーベル監督の映画『ミラル』(原題)に出演と、二人そろってハリウッドで引っ張りだこ。今後の活躍が大いに期待されるさわやかな新人に注目だ!(取材・文:吉川優子 / Yuko Yoshikawa)