坂東玉三郎、美の秘訣は「隠し」のワザにあり!
スクリーンで歌舞伎を鑑賞できるシネマ歌舞伎の第11作映画『シネマ歌舞伎特別篇 牡丹亭(ぼたんてい)』が30日、公開初日を迎え、主演・芸術監督を務めた坂東玉三郎が東京・東劇で舞台あいさつに立った。
朝早くからの上映にもかかわらず、満員となった客席を見た坂東は「歌舞伎だってこんなに早く始まらないのに……本当に感謝の念にたえない」と感激の面持ち。
本作は2009年3月に昆劇のメッカ・蘇州で、坂東玉三郎が客演した「牡丹亭」(第2部)と、その公演に挑む坂東の姿をとらえたドキュメンタリー(第1部)の2部構成作品。京劇よりも歴史の深い昆劇の舞台芸術を、臨場感あふれる映像と音響で描いている。日本の歌舞伎よりも長い600年の歴史を持つ中国の昆劇。若いころから中国演劇にあこがれていた坂東が、勉強の途中に出会ったのが昆劇「牡丹亭」だ。
第2部に収められた公演「牡丹亭」を大成功に終わらせた玉三郎だが、その裏には、中国語の中でも難しいといわれる「蘇州語」習得の苦労が。「何が大変って、舞台に上がって詰まっちゃったとき、日本語みたいに“あ~”とか“あの~”とか言えないんです。けいこのときはどうしても詰まっちゃって、詰まった途端に全部わかんなくなっちゃう。おかげで本番は詰まらずにすみました。救われたのは、古典の言葉が歌舞伎以上にわかりにくかったことですね(笑)」とさすがのベテラン歌舞伎俳優も四苦八苦した様子だった。
公演の成功で現地メディアからは、坂東自身「あこがれの人」と呼ぶ中国の伝説的名優・梅蘭芳の再来と賛辞を浴びている。人々を魅了する美の秘けつを聞かれた坂東は「中国の衣服というのは、黄砂が入らないように袖や襟がつまっている服なんです。襟が高くてかつらの生え際も全部隠れていて、ほとんど顔しか見えない。それが美の秘けつです。首も見えず、顔の輪郭も隠してしまって、後は手の使い方などに気を付ければ美女に見える、ということ(笑)」と優雅な笑顔を見せていた。
映画『シネマ歌舞伎特別篇 牡丹亭(ぼたんてい)』は全国公開中