6歳で誘拐され、虐殺の日々…壮絶な人生を歩んだボクサーのドキュメンタリーが完成!
6歳のときに誘拐され、ウガンダ国民抵抗軍の兵士として強制的に大量虐殺の訓練を受けた過去を持つ、IBFジュニア・ミドル級チャンピオンのカシーム・オウマを追った感動のドキュメンタリー映画『Kassim the Dream(カシーム・ザ・ドリーム)』(原題)のキーフ・デヴィッドソン監督に話を聞いた。
映画『ラストキング・オブ・スコットランド』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィッテカーがプロデュースをしている本作。カシームを題材に製作しようとした経緯は? 「少年兵を扱った映画を作ろうと思っていたんだけど、それには力強くダイナミックなキャラクターが必要だと思った。そんなとき、新聞でカシームについての記事を見つけた。そこには、これまでの彼の歩みが書いてあってね。それがすべての始まりだった」と語る。
抵抗軍から抜け出したカシームはどうやってビザを取得し、アメリカに滞在することができたのか? 「抵抗軍でボクシングのトレーニングをしていた彼は、まずウガンダでアマチュア・チャンピオンになった。そしてアメリカで行われる大きな軍隊のボクシング・トーナメントへ参加するため、チーム全員にビザが渡されたそうだ。ビザの価値に気付いたカシームはトーナメント後、そのままアメリカに住み始めたんだ。同じようにアメリカに住み付いたチームメートも何人かいるんだよ。カシームはグリーンカードを取得する前は、政治的保護を要求してアメリカに滞在していたんだ」とのことだ。
6歳のときに誘拐されて国民抵抗軍に加わったカシーム。彼のような年齢の少年が、抵抗軍に誘拐されるというケースは頻繁にあるのだろうか? 「残念なことだが、かなりある。彼を誘拐したのは、NRA(National Resistance Army)という抵抗軍だったが、現在勢力を持っているLRA(Lord's Resistance Army)は、この20年間で相当の数の子どもたちを誘拐しては、軍に加入させているんだ。その数は3万とも言われているが、現在LRAはウガンダを離れ、コンゴを支配し、子どもたちを誘拐しているんだよ。多くの人たちはこの問題を過去のことと考えているようだが、進行中の問題なんだ」と深刻な現状を教えてくれた。
無断で軍を離れたカシームだが、ウガンダ共和国大使の許可を経て、再びウガンダに戻った。彼は国民のヒーローと評価される反面、抵抗軍での非道な行いが批判されてもいる。人道主義の人物として立ち上がろうとしているカシームだが、その道は険しいという。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)