ケイト・ウィンスレットに赤裸々インタビュー!『愛を読むひと』の撮影現場秘話
ベルンハルト・シュリンクのベストセラー「朗読者」を原案に、映画『めぐりあう時間たち』の名匠スティーヴン・ダルドリーが映像化した映画『愛を読むひと』でアカデミー賞をはじめ数々の賞を獲得したケイト・ウィンスレットに話を聞いた。
Q:この役でいくつ賞を取ったか、覚えていますか?
ええ、覚えているわ。素晴らしい経験だもの。以前に何度も賞シーズンに参加してきたけど、ほとんど受賞できなかった。だから、まったく違う感覚なの。封筒が開けられ、自分の名前が呼ばれる。とてもワクワクする瞬間だわ。
Q:ゴールデン・グローブ賞でダブル受賞されたときはいかがでしたか。
衝撃的だったわ。本当にショックだったの。会場に向かうときは、あの素晴らしい候補者たちの間で、どちらか一つを受賞できればラッキーだと思っていた。それが2つも受賞できるなんて、誰が予想できるかしら。特にわたしにはね。2つも受賞するなんて、起こるはずのないことだわ。だから本当に感激した。素晴らしい出来事に、まだ興奮状態から抜け出せないの。
Q:ハンナはとても複雑な女性で、簡単には理解できないところがあります。彼女をどのように分析されますか。
最初のころに気付いたことは、ハンナを理解することが不可欠だということだった。必ずしも彼女を好きになる必要も、共感する必要もないと思ったわ。でも、彼女を理解しなくてはならなかった。それにとても強く感じたのは、わたしが思う彼女を、ほかの誰とも共有したくないということだったの。みんながハンナ・シュミッツに対する意見を持っている。彼女は意見を呼び起こすキャラクターだわ。小説の読者も、この映画のスタッフも、脚本家も、監督も、全員がハンナに対して違う意見を持っている。でもわたしの意見は、人と食い違うことが多かったの。だから胸の内に収めておく必要があった。いつもとは違う体験だったわ。普段は話し合って、みんなと共有し、協力し合う方が好きなの。だから彼女を演じるのは、ある意味孤独な作業だった。人と距離を置かなくてはならなかったから。
Q:この映画をラブストーリーと考えていらっしゃるということですが、ハンナとマイケルの長い時を重ねた関係の変化をどのようにとらえていますか。
二人の強烈な関係、互いを満たす二人の愛、彼女がどれほど彼を必要としているか、二人の関係が彼の世界にどれほど大きな影響を及ぼすか、物語はそれを描いていく。二人は互いのきずなを手放すことができないの。彼女はいつも期待している。「彼が刑務所に会いに来てくれるかもしれない。まだ二人には何かが残っているかもしれない」。そしてマイケルはハンナとの関係以後、どんな関係もうまくいかない。だから長い時を隔てた、素晴らしいラブストーリーだと思う。もちろん物語を通して、劇的な変化があるわ。そして、わたしにとっても、まさにラブストーリーなの。
Q:この役でヌードになることに、ちゅうちょしませんでしたか。
ないわ。一瞬たりとも、なかった。わたしはシャイではないの。かなり強い人間だわ。この仕事は、勇気のいる仕事なの。時には、演じるのが難しいシーンもあるわ。撮影が難しいシーンもね。でもわたしにとって重要だったのは、一連のシーンでデヴィッド・クロスを心地良くしてあげることだった。彼には一度もああいうシーンの経験がなかったから。わたしも若いときに同じ経験をしたから、どれほど恐ろしいか、よくわかっている。だから彼を快適にしてあげることに心を砕いたわ。幸運にも、そうなった。二人で笑い飛ばしたわ。しょっちゅう、大笑いしていたの。
Q:スティーヴン・ダルドリーは当代で最も優れた監督の一人ですが、俳優とどのようなかかわり方をする監督ですか。どんな特徴がありますか。
スティーヴンの特徴は、みんなを巻き込んでいくことね。そしてみんなを愛してくれる。とても心が大きい人なの。自分が彼の家族の一員だったら、さぞ素晴らしいだろうと思うわ。とてもオープンで、偏った判断をしない。そして俳優のグループに入ることが大好きで、楽しんでいる。彼はいつも、考えを共有しようとしてくれるの。「君はどう思う? 僕は間違っているかな? 僕のアイデアはこうだけど、君はどう思う?」と誰かのアイデアの方がいいと思えば、自分を変えることを恐れない。撮影現場はいつもそんな感じだったわ。わたしたち全員で取り組んだの。それはスティーヴンがそういう環境を作ってくれるからできたことよ。本当に優れた監督はそういう環境を可能にしてくれるし、そこがスティーヴンの抜きん出ているところだわ。
Q:7時間にも及ぶメークで、撮影中は睡眠不足だったそうですが、そういった環境は撮影にどういう影響を及ぼしましたか。
面白いことに、映画作りって、毎日軍隊の訓練キャンプにいるようなものなの。大変になることはわかっている。でもそれをすり抜けなくてはならないの。ライフルを置いて座り込み、あきらめることはできない。前進しなくてはならない。だからある意味、超人的になる必要があるわ。撮影はそういうものなの。前進あるのみ。もちろん、疲れるわよ。わたしだけじゃなくて、みんな疲れている。でも全員に一体感があるから、みんなが世話し合い、相手を気遣う。この映画にはそれがあった。だからこそわたしにとって特別な映画なの。全員が常に互いを気遣い合っていたから。
映画『愛を読むひと』は6月19日より全国公開