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奥田瑛二が語る、新作映画を通してわかった亡き父親への思い

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奥田瑛二、かく語りき。
奥田瑛二、かく語りき。 - Photo:Nobuhiro Hosoki

 奥田瑛二が、現在開催されているSubway Cinema主催のN.Y.A.F.F(ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバル)でクロージングを飾ることになった新作映画『ちゃんと伝える』と、これまでの俳優生活について語った。

映画『ちゃんと伝える』

 映画『ブラック・レイン』で松田優作が演じた佐藤浩史役のオファーを受けたが、断っていたという奥田。「そのときは映画『千利休 本覺坊遺文』に出演する約束があったし、舞台もありました。だから出演不可を先方に伝えたら、キャスティング・プロデューサーがわざわざ日本にやって来て、出演を迫るんですよ。でも僕は『日本人には、日本人の筋の通し方がある。いったん約束したのに、僕が降板したら、どれだけの人に迷惑が掛かるか。だから出演はできない』って断ったんですよ」と語る。

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 「それに脚本を渡されたときは、ストーリーが全然違っていたんです。凶悪犯であることは共通していますが、もっと普通の男が実は超凶悪犯だったという設定で……。英語もベラベラしゃべらなければいけないし、大変だとも思ったんですよ(笑)」と意外なエピソードを教えてくれた。

 そんな奥田の出演最新作は、園子温監督による『ちゃんと伝える』。病床の父親を見舞うサラリーマンが、自らも病に冒され、父親よりも余命が短いことを知り、残された時間をどう生きるべきか葛藤(かっとう)する感動ドラマだ。

 奥田自身、本作のように亡くなった実の父親に対して思いを伝えられなかったことはあるのだろうか? 「両親二人とも死に目に会っていないから……。父親の場合は、僕がカナダのモントリオールで映画『ピアニスト』を撮影していたときに亡くなって、撮影が終わって、10日後に日本に帰れたんですが、そのときはもう骨になっていました。俳優とか、こういう仕事をしていると、親の方も僕が死に目に会えないというのは覚悟していたようですから、自分の中では納得しています。自分が俳優として立派に活躍している姿を見てもらえただけで、幸せですけどね。ただちゃんと伝えるという意味が、この映画で初めてわかりましたね。普段簡単に『ちゃんと伝えなければダメじゃないか』と言っていたものが、もっと深いところにあると感じたりして」と静かに語ってくれた。

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 映画初主演となるEXILEのパフォーマー、AKIRAとの共演について。「新人として俳優で出てきても、僕にとっては関係ありませんね。つまり、彼が演技の中でぶつけてくるものを、僕が全部受け入れて、そして返していくんです。返すと彼も変わってくるので、そういうキャッチボールをしているんです。オレがこうするから、君はこう演じなさいという行為は、俳優として絶対やってはいけないことですからね」とベテランならではの感想を述べ、「僕の監督デビュー作映画『少女~an adolescent』の小沢まゆも、俳優経験のない新人だったし、映画『皆月(みなづき)』でも当時はあまり有名ではなかった北村一輝と吉本多香美が共演で……。そのとき僕は「お前らに新人賞を取らしてやるかならなぁ」って言ったんですよ。みんな変な顔してたけど、彼らはちゃんと新人賞を取りました」と振り返る。

 「楽しい、明るい、苦労するの3つがあると気持ちいいんです。時間がなくて苦労しましたけど、そこで自分がどれだけ楽しめるのかという状態をきっちりセッティングしてくれるのが園監督。結局は、ウマが合ったということですかね」と締めくくった。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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