11年もの歳月を掛けて完成したドキュメンタリー 生きるカリスマ、パティ・スミスが語る!
ニューヨーク・パンクシーンの生きるカリスマ、パティ・スミスと、そんな彼女に密着した映画『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』の監督であるスティーヴン・セブリングに話を聞いた。
本作は、スティーヴン監督が11年もの歳月を掛けて、ミュージシャンであり詩人であり、子を持つ母親としてのパティの素顔に迫ったアーティスティックなドキュメンタリー作品。フォトグラファーという肩書きを持つスティーヴン監督の長編デビュー作でもある本作だが、途中で製作費が底をついて、撮影を一端ストップせざるを得ない状況に陥ったことがあったという。
「とにかくドラッグのように、この作品にはお金をつぎ込んだよ!」と冗談交じりに当時を回想するスティーヴン監督は、「とにかく借金がかさんでね。まだ返済中だけど問題なしさ。とにかくこのプロジェクトを愛していたんだ」と本作への思いを語る。一方のパティは、ゴッホや詩人のランボー、ボードレール、ウィリアム・ブレイクなど偉大ながらも貧しかった芸術家を例に挙げて「わたしは、幼いころからアーティストと歴史には貧しさがつきものだと認識していたわ!」とどんな困難があろうとも不安はなかったと語る。
そして「わたしの人生は上がったり、下がったりの連続。スティーヴン監督に会ったときは大変なときだったの。長い間闘病していた主人のフレッドが亡くなって、お金もなく、子ども二人を抱えてまたやり直さなくてはならなくて……。でも想像力があって健康だったから、何事にも恐れないでいたのよ」と困難に立ち向かう秘けつは恐れないことにあるとパティは言う。
そんな困難を経て、ついに完成した本作についてパティは「出演している父も母も、そして犬も映画完成の前に亡くなってしまったけど、それらのシーンを観るととてもうれしいの。大変な時期からハッピーな時期まで、すべてがここに詰まっているからね」と満足気だ。スティーヴン監督も「まるで『不思議の国のアリス』のような雰囲気を持っている」とまんざらではない様子。くしくも映画の公開日は、パティの父親の命日である8月29日。本作からまたパティの新たな人生と、伝説が始まっていくのだろうか?
映画『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』は8月29日よりシアターN渋谷、シネマート新宿ほかにて全国公開