ロカルノ映画祭で石井克人脚本・原作の『レッドライン』に約8,000人の観客が大歓声!
石井克人が脚本・原作を担当した、2Dアニメ映画『レッドライン』が現地時間14日深夜、スイスで開催中の第62回ロカルノ映画祭のピアッァ・グランデ部門でワールドプレミア上映された。
同作品は、映画『茶の味』がカンヌ国際映画祭で評判を呼んだ石井氏と、オムニバスアニメ『アニマトリックス』の一編『WORLD ECORD』を手掛けた小池健監督作、そして『サマーウォーズ』のアニメ制作会社「マッドハウス」が手を組んだ話題作。近未来を舞台に、主人公のSPをはじめとするスピード野郎たちが、宇宙最速の座をめぐって5年に一度のカーレース「REDLINE」で激しいバトルを展開させるレースムービーだ。
石井氏は「『パーティ7』を監督したとき、オープニングのアニメを小池君に担当してもらったのですが、『あの映画はアニメ部分の方が良かった』と言われて、ならば小池君と作ろうと(笑)。それで企画を進めていて、米国中西部を旅行していたときに、田舎の、職もないような人が車だけは一生懸命ピカピカに磨いているのを見たのがヒントになりました。もともとボクはアメコミが好きだったので、日本の本流とは違うところで、外国の人にも届く作品を作ろうと思ったんです」と言う。
このアニメ大国日本の精鋭たちが、ハリウッドの3D流行に対抗するかのごとく、あえて手描きの2Dにこだわり、製作に6年もかかった。そんな注目作とあって、深夜11時30分からの上映にもかかわらず約8,000人収容の野外劇場はほぼ満席となった。
舞台あいさつに立った小池監督は「スタッフと一緒に長い時間をかけて完成させた作品なので、世界四大映画祭で上映されて光栄です。ダイナミックな、体感型のアニメなので、クラブ感覚で楽しんで下さい」。石井氏も「アニメですが、トレンドとは違うバタ臭い映画です。実写と変わらない感覚で観てもらえればうれしい」と笑顔を見せた。
また壇上では、労作の完成と共に、もう一つの朗報が発表された。小池監督がプロデューサーである二方由紀子さんに、「『READLINE』が完成した暁にはワールドプレミアの場所で結婚しよう」というプロポーズが実り、公式上映の2日前に、スイスの「ビュルゲンシュトック・チャペル」で挙式した。同所は、あの女優オードリー・ヘプバーンやソフィア・ローレンも挙式を行った独身女子憧れの場所。2人は壇上でも、石井氏らに冷やかされながら映画タイトルにちなんで赤いリボンで手を結び、観客から温かい祝福を受けた。
また同映画祭では今年、日本アニメの大回顧特集「マンガ・インパクト-日本のアニメーションの世界展」を開催中。石井氏は「日本を代表するアニメ映画200本のうち、100本が上映されているそうですが、こんな風に日本のアニメ作品が一堂に会す映画祭はほかにないし、これからもそんなチャレンジをする映画祭は出てこないと思います。日本ではなかなかこういう機会はないですから。とにかく日本はクリエイターに対するリスペクトがあまり感じられないですよね。アニメの殿堂計画もありますけど、アニメ好きにはいいんでしょうが、クリエイターの経済面を改善するためには、アプローチが違うんじゃないかな? と思いますね 」と、さまざまな論議を醸し出している政府の「国立メディア芸術総合センター」建設計画をチクリと批判した。 同作品の日本公開は2010年春。(中山治美)