東京藝大の現役学生のサウンドデザイナー、カンヌに続いてヴェネチア映画祭にも参加!
東京藝術大学映像研究科に在籍するサウンドデザイナーの森永泰弘さんが、第66回ヴェネチア国際映画祭短編部門のイベントでスペシャルライブコンサートをヴェネチアのサン・セルボーロ島で行った。
第66回ヴァネチア映画祭-コンペティション部門作品一挙紹介!
同イベントは、ヴェネチア国際映画祭と同時期に行われている短編映画祭サーキット・オフ・ヴェネチア国際映画祭との共同企画として行われたもの。シンガポールのツーニェン・ホー監督が製作した、イタリアの画家カラヴァッジオを中心にバロック絵画を45分のワンショットで映像化した映画『アース』に、森永さんの音楽と、イタリアのギタリスト・ステファノ・ピリアの生演奏を付けるというユニークな試みだ。森永さんは、溝口健二監督や勅使河原宏監督作など日本映画約100本の中から抜粋した音響や音楽をコラージュし、サウンドトラックにまとめたものを美しい映像に合わせた。森永さんは「ギタリストとは本番まで一度も会わず、メールでやり取りしたのみ。ぶっつけ本番だったんですよ」と苦笑い。
森永さんが同イベントに参加することになったのは、今年のカンヌ国際映画祭がきっかけだった。森永さんは、監督週間部門に出品されたマレーシア映画『KARAOKE』(クリス・チョン・チャンフィ監督)でサウンドデザインを担当した。チャンフィ監督とともにカンヌ入りしていた森永さんに、同じく監督部門で参加していたホー監督に声を掛けられたという。「『KARAOKE』を観てくれたそうで、『今度こんな企画をやるんだけど一緒にやらない?』と言っていただいた。当初はドイツの演劇祭で上映すると聞いていたんですけど(笑)」と思わぬヴェネチア初参加にニンマリ。
森永さんは、学生ながら今年1年で三大映画祭のうちカンヌとヴェネチアの二つに参加したことになるが「とは言っても、カンヌはなんだかワケがわからないまま終わっちゃいましたから(苦笑)。でも僕は、これで終わりじゃないですから。むしろこれから頑張っていかないと」と大舞台に舞い上がりそうになる気持ちを封印した。
『KARAOKE』の方もその後、トロントのほか10月に行われる釜山国際映画祭での上映も決定した。森永さんは「アジアの監督たちと仕事をするのは文化の違いもあり、口論になることもあるけど、発見も多いから刺激になります。人もいない! 機材もない! さて、そんな中でどうやるか? という状況になると、意外なアイデアが出てくることが多いんです。今後も映画というメディアにとらわれず、演劇、ダンスなど音と一緒に生きて生きたい」。まずは来る卒業に備えて、論文提出などの現実をこなす方が課題のようだ。(取材・文:中山治美)