映画業界の異端児ハーモニー・コリン監督の新作は、画質の悪いホームビデオ!?
映画『KIDS/キッズ』の脚本家としてデビューし、その後は映画『ガンモ』『KEN PARK ケン パーク』『ミスター・ロンリー』など個性的な映画を製作してきたハーモニー・コリン監督が、現在開催されている第47回ニューヨーク映画祭の記者会見で、新作映画『Trash Humpers』(原題)について語ってくれた。
本作は、グロテスクなマスクを被った3人の大人が、周りのものをすべて破壊しながら反社会的行為を続ける挑発的な作品。その映像は、まるで1980年代の画質の悪いホームビデオを観ているような雰囲気がある。
「脚本のない状態で作った」と話すコリン監督は「この作品を映画とは呼びたくない。これは道端に落ちていたビデオテープを家に持って帰って観たようなシロモノさ!」と本作についてコメントする。また劇中でホモのジョークを言い続ける男について「実際に演じた彼も、あるラジオ番組の仕事で6時間くらいオチのない話をしてクビになったやつなんだよ!」と明かす。
このマスクを被っている3人組は、映画『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』に登場するキャラクターを思い起こさせる。さらにこの3人のうち2人は、何とコリン監督と彼の妻が演じているのだ。「過去のホラー映画に影響を受けたものじゃない。それにこのキャラクターは年配の設定なんだけど、実際に年配の人たちをキャスティングしたとしても、こんな破壊的な行為をする役柄では参加してくれないから、僕らがマスクを被って演じているんだよ」とどこまでも個性的だ。
さらにコリン監督は「この映画の撮影期間は2週間さ。前作の『ミスター・ロンリー』のときは時間と金が掛かり過ぎて、かなりイライラさせられたんだ。それにハイ・クオリティーな映像を要求する最近の風潮にもひとこと言いたかった。僕は必ずしも完ぺきできれいな作品を作りたいとは思わない。起承転結のあるような構成も好きじゃないし、これは子どものときからずっと変わらない考えさ。起承転結があるのは、どこかウソっぽくて僕にとってはつまらないんだ」と熱弁する。
映画界の異端児であるコリン監督は、ハリウッドとは正反対に位置し、挑発的な作品を生み出し続けている。本作も賛否両論の評価を受けるであろうが、間違いなく新たなファンを増やしていくことだろう。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)